肥後医育塾公開セミナー

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平成23年度 第3回公開セミナー「認知症を考える」 〜医療・介護・地域支援のいま〜

司会・講師

【司会】
肥後医育振興会副理事長・熊本大学名誉教授・桜十字病院総院長
西 勝英

    【司会】
    肥後医育振興会副理事長・熊本大学名誉教授・桜十字病院総院長
    西 勝英

【座長】
熊本大学大学院生命科学研究部脳機能病態学分野(神経精神科)教授
池田 学

    【座長】
    熊本大学大学院生命科学研究部脳機能病態学分野(神経精神科)教授
    池田 学

【講師】
熊本大学医学部附属病院神経精神科講師
橋本 衛

演題:《講演@》認知症とはどんな病気か 〜症状から診断、治療まで〜
    【講師】
    熊本大学医学部附属病院神経精神科講師
    橋本 衛

    演題:《講演@》認知症とはどんな病気か 〜症状から診断、治療まで〜
【講師】
山鹿回生病院認知症疾患医療センター連携担当者
富田 三貴

演題:《講演A》認知症疾患医療センターの概要について
    【講師】
    山鹿回生病院認知症疾患医療センター連携担当者
    富田 三貴

    演題:《講演A》認知症疾患医療センターの概要について
【講師】
NPO法人たまな散歩道理事長
西村 哲夫

演題:《講演B》認知症の方を介護する者として伝えたいこと
    【講師】
    NPO法人たまな散歩道理事長
    西村 哲夫

    演題:《講演B》認知症の方を介護する者として伝えたいこと
【講師】
熊本市中央4地域包括支援センターやすらぎの森センター長
那須 久史

演題:《講演C》認知症の方を地域で支えるために
    【講師】
    熊本市中央4地域包括支援センターやすらぎの森センター長
    那須 久史

    演題:《講演C》認知症の方を地域で支えるために

セミナーの内容

  第45回肥後医育塾公開セミナー「認知症を考える〜医療・介護・地域支援のいま〜」が2月25日、熊本市春日のくまもと森都心プラザであり、約500人が受講した。主催は肥後医育振興会、化学及血清療法研究所、熊本日日新聞社。
 同振興会の副理事長で桜十字病院の西勝英総院長が司会、熊本大学大学院生命科学研究部脳機能病態学分野の池田学教授が座長を務め進行。同大医学部附属病院神経精神科の橋本衛医師、山鹿回生病院認知症疾患医療センターの富田三貴連携担当者、NPO法人たまな散歩道の西村哲夫理事長、熊本市中央4地域包括支援センターやすらぎの森の那須久史センター長の4氏が、認知症とその支援の在り方などについて講演。最後にパネルディスカッションが行われ、参加者からの質問に答えた。

約500人が参加した第45回肥後医育塾公開セミナー=熊本市春日のくまもと森都心プラザ

パネルディスカッション Q&Aコーナー

認知症にならないようにするには、どうしたらいいですか。
橋本 脳の血管障害が引き起こす認知症は予防が可能です。脳梗塞や脳出血を起こさないよう、高血圧や糖尿病の治療を受け、喫煙、過度の飲酒を控え、適度な運動をし、生活習慣病に注意することが大切です。ただアルツハイマー病などは、予防ができないといわれています。しかし発病には、体質と生活両面の要因がありますので、十分な睡眠、抗酸化作用のあるビタミンEを多く含むバランスの良い食事、趣味を持つなど、普段の生活を整えることで、発病の可能性を低くすることができます。
 池田 自宅に引きこもらないよう、地域の方々同士で声を掛け合うことも認知症予防につながります。

父はかたくなに認知症の受診を拒否します。どうすればいいでしょうか。アドバイスをお願いします。
富田 私たち連携担当者は、行政の担当者と同行訪問して受診の促しを行っています。本人の興味や関心につながることを聞き、例えば車の運転をしたい人に「これからも運転できるよう受診しましょう」と促すことも有効でした。それから、頻回ではありませんが、往診を行うこともあります。認知症はできるだけ早期に治療を始めた方がいいのですが、本人のプライドが早期受診を妨げているケースは多いと思われます。それぞれに対応が異なりますので、地域包括支援センターや認知症疾患医療センターにご相談ください。

認知症の奥さんを介護している方が、自分のうつ状態を気にされています。どこに相談すればいいでしょうか。
那須 まずは最寄りの地域包括支援センターに相談してください。熊本市には29カ所(4月からは27カ所)あります。場所が分からない場合は市・町・村の役所・役場にお尋ねください。

認知症の義母に対し駄目だと分かっていても、どうしてもイライラします。どうしたらこの感情を乗り越えられますか。
西村 お母さまの立場になると、お嫁さんの世話にならなければならない屈辱感があり、それが抵抗や暴言につながっているのかもしれません。そこでお母さまのプライドを尊重し、必要なことだけ手伝うようにしてみてはいかがでしょう。また介護時の会話だけではなく、「今日は散歩に行きましょうか?」といったように普段から何気ない会話を心がけ、気持ちが通じる関係づくりを図ることも大事だと思います。

トイレの介助で、本人が恥ずかしくないようなやり方はないものでしょうか。
西村 誰でも排せつを、自分以外の人に手伝ってもらうのは恥ずかしいものです。ただ排せつの介助の時、何が(どの部分が)恥ずかしいのかは人によって異なります。また、認知症の進行により何ができなくなっているかも知る必要があります。例えばトイレの座る位置が分からなくなっている人には座る位置が分かる方法を工夫することです。まず、本人の気持ちや認知症の症状を分析して理解し、介護方法を考えたり、環境を整えたりすることが大事です。

76歳女性です。認知症が進まないようにする簡単な日常の心がけはありますか。
那須 介護予防には足腰の筋力をつけ、嚥下(えんげ)の機能を維持し、低栄養にならないようにすることが大切です。また、家族の中で何か役目を持ってもらう、本人にできることを見つけてもらうことも重要です。特に認知症の予防では、相手に何かしてあげる機会があるといいでしょうね。
(文中敬称略)