【講師】 |
『《講演A》認知症疾患医療センターの概要について』
全国から注目の“熊本モデル”
熊本県は全国有数の長寿県。県人口に占める65歳以上の割合は25.5%(平成17年)です。県内の認知症高齢者数は推計で約5万人。今後5年間で約1万人増加するといわれています。そこで本県では、医療・介護・地域支援の3体制で、認知症対策を総合的に推進しています。基幹型の熊大病院のほか、地域拠点型の認知症疾患医療センターが9カ所設置され、2層構造で県全域をカバーしています。これは“熊本モデル"といわれ、全国から注目されています。
熊大病院は高度な鑑別診断のほか、医師向けの研修会や事例検討会を開くなど、人材育成機能を持っています。一方の地域拠点型は、各地域の認知症専門医療機関として鑑別診断を行うとともに、脳外科や神経内科などの専門医、かかりつけ医、高齢者の相談窓口である地域包括支援センターなどと連携を図れるよう、地域のネットワークづくりにも力を入れています。
山鹿市は現在、高齢化率が30%を超え、全世帯の4分の1が高齢者のみの世帯です。地域拠点型認知症疾患医療センターに指定されている山鹿回生病院では完全予約制で、毎週水曜が「物忘れ外来日」です。本人や家族のほか、かかりつけ医やケアマネジャーから連絡が入ると、まず連携担当者が窓口となり対応しています。
専門外来の受診日には、臨床心理士がさまざまな認知機能検査を行い、連携担当者が家族やケアマネジャーから情報収集し、それから診察となりますが、頭部のMRIやSPECTが必要な場合は、協力病院に依頼することもあります。鑑別診断後はかかりつけ医や、手術が必要な場合は地域の専門医を紹介することもあります。
地域拠点型には、地域連携強化の役割があります。連携担当者が山鹿市内の病院や診療所、介護事業所、行政機関などを訪問し、地域拠点型の概要や機能の説明、協力のお願いをします。また地域支援の役割もありますので、山鹿市包括支援センター内で月に2回、認知症相談日を設けるほか、認知症家族の集いも行っています。さらに認知症の啓発活動として、地域の関係者が集まり、地域拠点型の事例検討会の開催や年に2回、山鹿市民を対象にした認知症フォーラムも開催しています。
受診拒否者への対応や山鹿市以外の地域との連携など課題はありますが、今後は保健所や行政とも連携強化を図り、現在の2層構造の認知症疾患医療センターの機能を、最終的には地域のかかりつけ医や専門医を加えた3層構造にしたいと考えています。