肥後医育塾公開セミナー

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平成26年度 第2回公開セミナー「いつまでも食事を楽しむために」

司会・講師


肥後医育振興会 理事長
西 勝英


    肥後医育振興会 理事長
    西 勝英

【司会】
肥後医育振興会 常任理事、熊本大学大学院生命科学研究部小児科学分野 教授
遠藤 文夫

    【司会】
    肥後医育振興会 常任理事、熊本大学大学院生命科学研究部小児科学分野 教授
    遠藤 文夫

【座長・講師】
熊本大学大学院生命科学研究部 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野 教授
湯本 英二

演題:講演(1)どのように食物を飲み込むの?
    【座長・講師】
    熊本大学大学院生命科学研究部 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野 教授
    湯本 英二

    演題:講演(1)どのように食物を飲み込むの?
【講師】
熊本大学名誉教授 伊東歯科口腔病院 顎顔面再建・再生センター長
篠原 正徳

演題:講演(2)歯と口腔を大切に
    【講師】
    熊本大学名誉教授 伊東歯科口腔病院 顎顔面再建・再生センター長
    篠原 正徳

    演題:講演(2)歯と口腔を大切に
【講師】
熊本大学医学部附属病院 栄養管理部 栄養管理室長
猪原 淑子

演題:講演(3)食べやすい食事の工夫
    【講師】
    熊本大学医学部附属病院 栄養管理部 栄養管理室長
    猪原 淑子

    演題:講演(3)食べやすい食事の工夫
【講師】
熊本大学大学院生命科学研究部 呼吸器内科学分野 教授
興梠 博次

演題:講演(4)高齢者の肺炎とその予防
    【講師】
    熊本大学大学院生命科学研究部 呼吸器内科学分野 教授
    興梠 博次

    演題:講演(4)高齢者の肺炎とその予防

セミナーの内容

  第53回肥後医育塾公開セミナー「いつまでも食事を楽しむために」が1月21日、熊本市中央区のホテル熊本テルサで開かれ、約350人が受講した。公益財団法人肥後医育振興会、一般財団法人化学及血清療法研究所、熊本日日新聞社主催。
 肥後医育振興会の遠藤文夫常任理事が司会を務め、熊本大学大学院生命科学研究部の湯本英二教授ら、嚥下(えんげ)、口腔、栄養、肺炎の専門家が講演。最後に受講者からの質問に答える「Q&Aコーナー」も設けられた。

約350人が受講した第53回肥後医育塾セミナー=熊本市中央区のホテル熊本テルサ

Q&Aコーナー「あなたの質問にお答えします」

食事時でなくても時々、喉がつかえます。水を少し飲み、あめをなめたりします。
湯本 病気でないのに喉に不快感や渇きを感じる場合は、何か病気が隠れている可能性があります。よく検査をしてみる必要があるでしょう。

誤嚥を予防するために、日頃から訓練できることはありますか。
湯本 QOL(生活の質)を高めるためには、「楽しく食べる」「他の人とコミュニケーションを図る」「自分で動く」ことが大事です。嚥下障害の人の訓練としては、下顎の後ろに両手の親指を当て、顎を下に引く力に抵抗し親指で押し返す「嚥下あご体操」や、額に手を当て、自分のへそをのぞき込むように頭を下げる力に抵抗し手で押し返す「嚥下おでこ体操」を、それぞれ毎食前に5秒間×10回行うと、喉の筋肉が鍛えられます。嚥下障害のない人の予防としてシャキア運動があります。上向きに寝て、自分の足首を見るように首だけを上げる運動です。ただし、頚椎の悪い人はしてはいけません。

寝る時も総義歯を着用していると、誤嚥性肺炎になるリスクが高まりますか。
篠原 義歯自体に細菌が付いてしまいますので、寝る時は歯磨きをして、義歯を外して寝る方が安全です。

息子の夕食は毎日、21時過ぎ。肥満の息子に対し、改善の工夫はないでしょうか。
猪原 夕食後はあまりエネルギーを使わないため、夜遅い食事は肥満につながります。また、お酒を飲みながら食事をすると、1食で1000キロi以上になります。デスクワークが中心で肥満がある人なら、1日3食で計1800キロiが適量です。
湯本 カロリー制限のため、朝食や昼食を抜くとよくありません。なるべく夕食後、3時間おいて寝るよう生活改善を。

「フレイル」の具体的な予防法を教えてください。
湯本 健常な状態と病的な状態の中間段階を「フレイル(虚弱)」と、日本老年医学会が名付けています。この段階なら健常な状態に戻り得るとされています。
猪原 体重減少、筋力低下、身体活動量が低下すると、歩くのが面倒になり、買い物にも行かなくなります。そうすると、食生活もバランスを欠くことになります。日頃からタンパク質、ビタミン、ミネラルを十分含んだバランスの良い食事を取り、体を動かすことが重要です。
興梠 高齢者の場合、体力維持と頭の働きを活発にするためにも、毎日の努力が大事です。

本人は74歳の女性で寝たきりでしたが、会話はできました。医師から胃瘻(いろう)の処置はできないと言われました。嚥下障害で困っていたので、「声帯を閉鎖して呼吸を行う穴を喉に開ける誤嚥防止手術をしたら、口から食事ができるようになる」と説明を受けましたが、その手術を受けませんでした。説明の2カ月後に本人は亡くなりました。誤嚥防止手術をした方がよかったのでしょうか。
湯本 嚥下障害がある人が誤嚥性肺炎を繰り返すと、全身状態がどんどん悪くなります。誤嚥防止手術をすれば、唾液が気管に入って肺炎を起こす心配がなくなるため、夜間も頻回に吸引をする必要がなくなり、患者さんは安心して眠ることができます。ただ、手術すると声を失いますので、私がこの手術を提案するときは、すでに会話ができない状態の場合が多いのです。医師として手術を勧めていいものかどうか、悩ましいケースですね。
興梠 いつも誤嚥性肺炎を起こす人で、会話を理解し考えていることを筆談で伝えることができ、認知能力が保たれているならば、誤嚥防止手術を受けてもよいと思います。会話を大事にするか、食事を大事にするか、選択しなければならないケースだと思います。