肥後医育塾公開セミナー

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令和8年度 第1回公開セミナー「女性の気になるからだの悩み」

【講師】
熊本大学大学院リプロダクティブヘルス学講座准教授
佐々木 瑠美

『【講演4】更年期の不調 どう向き合う』
有効なホルモン補充療法


  更年期は何歳ぐらいを指す言葉かご存じでしょうか。閉経前の5年と閉経後の5年の合計10年間が更年期とされています。日本人の閉経平均年齢は50・5歳と言われており、おおよそ45歳から55歳までが更年期の目安です。
 更年期にはエストロゲンの分泌量が急激に低下します。閉経前にスッと下がるのではなく、上下に揺らぎながら減少していきます。ホルモン量の変化により、さまざまな症状が現れますが、日常生活に支障をきたすような状態になると更年期障害と言います。体調不良で仕事を辞めた方もおり、その社会的な影響は看過すべきではありません。
 具体的な症状は、急に顔や上半身が熱くなったり、汗が止まらなくなったりする血管運動神経症状、疲労感やめまい、動悸[どうき]、肩こりなどさまざまです。こうした身体的症状に加えて不眠やいらいらといった精神的症状も現れます。
 更年期症状を自覚しても、「病院に行くほどではない」「我慢できる」といった理由で受診しない方も多いようです。サプリメントや運動、バランスの取れた食事などの対処法を挙げる方もいます。
 ただ、サプリメントや運動などで症状が改善しない場合は、やはり薬が有効です。例えば女性ホルモンを補充する治療法があります。血管運動神経症状に有効だと言われており、使用から数週間ぐらいで効果が見られます。更年期症状のほか、骨密度の増加、コレステロールや糖代謝の改善、大腸がんのリスク低下などにも効果があると言われています。ただし、薬を始める時期は、リスクを適切に管理したうえで、60歳以下が推奨されています。
 このホルモン補充療法は日本ではほとんど浸透していません。「デメリットが心配」という方も多いのでしょう。確かに注意すべき点はあります。女性ホルモンを使うわけですから不正出血が起こる可能性があります。乳がんのリスクも上がります。しかし、しっかりと検診を受けていれば安全に使っていただけます。
 更年期障害の症状の裏に別の病気が隠れていることもあります。治療に当たって大事なのは、それらの病気を見逃さないことです。動悸が続いている原因は、実は貧血かもしれません。手がこわばる症状の方は関節リウマチも疑われます。問診を重ね、本当に更年期障害による症状なのか十分に注意しながら診察を行います。
 更年期の症状で苦しんでいるのに周囲から理解されないケースも多いようです。「だれもが経験すること」と我慢せず、積極的に相談することが大事だと思います。