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【講師】 |
『【講演3】安心して妊娠・出産を迎えるために』
母子守る健診と周産期医療
妊娠健診の大切さや周産期医療の現状についてお話します。まずは妊娠初期の「つわり」です。妊娠6週ごろから半数以上の方に吐き気や嘔吐[おうと]が見られます。症状には個人差があり、体重が大きく減少し、脱水や電解質異常を起こした状態を妊娠悪阻と言い、点滴や入院療法を行うことがあります。つらいときには十分な休息を取り、無理をしないことが大事です。
次は受精卵が子宮内膜以外に着床する異所性妊娠です。頻度は全妊娠の約1%で、その中で最も多いのは卵管妊娠です。卵管が破裂して突然の出血と下腹部痛が襲い、大量に出血すれば生命に関わることもあります。性感染症、特にクラミジア感染症による卵管の炎症や癒着などがリスクと考えられています。
流産についてお話しします。妊娠22週ごろより前に妊娠が終結した場合を流産といいます。決して珍しいことではなく、妊娠全体の15%に見られます。妊娠12週未満の早期流産で最も多い原因は赤ちゃん自体の染色体異常です。偶然に起きるものがほとんどで、流産を「繰り返すかもしれない」と過度に心配する必要はありません。
妊婦健診は母親と赤ちゃんの健康を定期的に確認するために行います。まずは貧血です。日本では約4割の妊婦が貧血で、その9割が鉄欠乏性貧血です。赤ちゃんへの影響については胎児発育遅延や低出生体重児の増加、早産との関連が指摘されています。
若い世代に多い子宮頸[けい]がんの検診に加え、母親から赤ちゃんへの母児感染を防ぐために、母親の梅毒、B型肝炎、C型肝炎の検査も行います。風疹抗体検査も重要で、母親の抗体が低いまま妊娠5カ月までに感染すると、赤ちゃんに難聴や先天性心疾患などを引き起こすことがあります。
最後は熊本県の周産期医療についてです。県内の分娩[ぶんべん]取り扱い施設はこの10年間で約4割も減少しています。総合病院で取り扱うのはわずか7施設です。医療機関や医師が都市部に集中し、医療の地域格差は年々拡大しています。地方で安心して妊娠・出産できる医療体制の維持は簡単ではありません。
そこで荒尾市では、有明地区で唯一の分娩取り扱い病院である荒尾市立有明医療センターと市内の産科診療所がタッグを組んで、令和5年10月に荒尾市周産期システムをスタートさせました。妊娠35週までは診療所で妊婦健診を行い、その後の健診は医療センターで診療所の医師が担当します。少なくなる医療資源を有効活用し、地域で子どもを産み、守り育てる環境を維持したいと思っています。