肥後医育塾公開セミナー

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令和8年度 第1回公開セミナー「女性の気になるからだの悩み」

【講師】
熊本市民病院産婦人科産科部長
本田 律生

『【講演2】プレコンセプションケア』
妊娠に向け検査や準備を


  「プレコンセプションケア」という概念についてお話しします。「プレ」は英語で「前」、「コンセプション」は「妊娠」という意味で、プレコンセプションケアとは「妊娠前のケア」を指します。
 世界保健機関(WHO)が提唱している考え方で、具体的には妊娠前に性感染症やHIVの検査を受けましょうとか、禁煙をしましょうとか、そういった取り組みを広めていくことです。熊本ではまだ進んでいませんが東京都などでは、このような検査に補助金を出している自治体もあります。
 母親や赤ちゃんに病気や異常が起きる危険性が高いハイリスク妊娠の背景には、さまざまな要因があります。晩婚化に伴って妊婦の年齢が相対的に上がっています。また、スタイルを気にして痩せすぎの女性が増えており、月経異常によって妊娠しにくくなることもあります。
 実際の症例を紹介します。喫煙歴があり血圧が高く、肥満で糖尿病予備軍という30代の女性です。月経の周期が長く、排卵に時間がかかる状態でした。経口の排卵誘発剤を投与したところ、その翌月には妊娠しました。ただ、合併症のないように妊娠初期から降圧剤を使ったり、血糖を管理したりしたほか、妊娠中期からはインスリン治療も始めました。
 何とかコントロールできて適正体重の元気な赤ちゃんが誕生しました。ただ、こういう妊娠中の治療や介入をできるだけしないで済むように、妊娠前から気を付けてもらうのがプレコンセプションケアの目的です。
 本人だけでは難しいプレコンセプションケアもあります。女性の加齢に伴って卵子の染色体異常の確率が上がってきます。だから妊娠しても流産の頻度が増加します。また、抗がん剤を使った治療によって、卵子にダメージを与えてしまうこともあります。これはなかなか本人では解決できない問題です。
 がん患者さんの場合、抗がん剤を使う前に卵子を冷凍保存し、将来的にがんが改善してから妊娠を試みるということが10年ほど前から行われています。
 また、医療目的以外でも卵子凍結を選択する人が出てきました。若いときの卵子を凍らせて保存することで、5年後でも10年後でも卵子を融解して妊娠にチャレンジできます。東京都や大阪府などでは、この取り組みに補助金を出しています。
 プレコンセプションケアの普及によって減少を続ける出生数が増加に転じ、一人でも多くの赤ちゃんが生まれてくることを期待しています。