肥後医育塾公開セミナー

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令和7年度 第3回公開セミナー「AI×ロボット×外科医療」

【講師】
熊本大学病院
消化器外科特任助教
山下 晃平

『【講演4】AIが変える消化器外科医療』
将来は遠隔手術も可能に


  消化器外科は多くの臓器が対象で、さまざまな疾患を担当しています。そうした消化器外科において、どのようにAIが有用であるか紹介します。
 外科手術では、隣り合う重要な臓器を損傷しないようにすることが非常に重要です。そこでAIによる手術中のナビゲーションシステムによる画像表示が役立っています。例えば、大腸手術では近くに尿管があって、それを傷つけないようにAIが色で尿管の位置を伝えてくれます。ナビゲーションシステムがあることで、自信を持って手術を進めていくことができます。
 ロボット支援下手術は、実際にロボットが手術するわけではなく、術者が離れたところから操作する形になります。2010年代に登場し、消化器外科でも右肩上がりに件数が増えています。内視鏡による腹腔鏡手術と違うのは、ロボットには人間の手と同等以上の関節があるということです。また、3次元で高解像度のHDビジョンが術中に見られることが非常にメリットになっています。
 腹腔鏡手術と開腹手術の違いは、小さな傷口で処置ができるようになったということです。食道の手術の場合、近くに心臓があり非常に狭いスペースでの操作が必要になります。いかに熟練の医師でもある程度の手振れが起こりえます。ロボット支援下手術になれば、カメラや器具のぶれはほとんどありません。術者の急な動きを軽減する機能などもあります。2人の術者が同時に手術するデュアルコンソールという機能があり、熟練した医師が難しい場所を担当し、若手が簡単なところをやるということで教育的な側面もあります。
 ロボット胃がん手術でのナビゲーションシステムを紹介します。胃と膵臓[すいぞう]は非常に近い場所にあり、リンパ節を摘出するときに膵臓とリンパ節を含む脂肪の見分けが難しいのです。誤って膵臓を傷つけると、タンパク質を溶かす消化酵素である膵液が漏れ出す膵液漏という致死的な合併症につながります。ナビゲーションを使うと、色を変えることでAIが膵臓の位置を教えてくれるのでそこに触れないよう気を付けながら処置できます。
 遠隔ロボット手術は離れた場所から医師が操作して行うもので、既に2001年に米国とフランスの間で胆のう摘出術が安全に行われています。ガイドライン整備が進められているなど、わが国でも遠隔手術への準備が進んでいます。医師と患者が離れた場所にいても手術ができる時代がもうそこまで来ています。