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【講師】 |
『【講演3】整形外科領域におけるAIの活用』
医師の手術を正確に支援
整形外科でAIを使った代表的な二つの例を紹介します。まず、予防に関する「大[だい]腿[たい]部近位部骨折のリスク評価ツール」についてです。
大腿部近位部骨折とは大腿骨の付け根の骨折で、高齢者や骨粗しょう症で骨が弱い方などが、つまずきや転倒などによる外傷で発生することがほとんどです。手術をしない保存療法では骨がつながるまで長期間寝たきりになるため、どの施設でもできる限り早期の手術を勧めています。
手術をしても必ずしも元の生活には戻らず、要介護状態になるリスクも高いことで知られます。そのためリスクを知り骨折を起こさないことが重要です。高齢者の骨折には多数のリスク因子が複雑に関係しているため、従来の手法では解析が非常に難しい現状があります。そこで膨大なデータから人間では気付けない複雑な関係性を自動で学習する「機械学習」を用いた解析が有効と考えています。パターンや規則性を学習し予測や分類を行うもので、AIに含まれる技術です。
欠点もあって、なぜそう判断したのか、人間が理由を理解できないブラックボックス化するという問題です。そこで機械学習の高精度を備えつつ、誰でも原因が理解可能でどこでも利用できる骨折リスク評価ツールを開発しました。スコアリングシステムという方法で、機械学習の判断を誰もが理解できるよう点数表に変換しています。
医療機関用と家庭用の2種類あり、家庭用はアンケートのみ。手軽なため、受診前に早期にスクリーニングし骨折リスクの掘り起こしに貢献できると期待しています。体格や筋力など42の因子を使い県内の2400人を対象にした調査を解析して作成しました。因子ごとにプラスマイナスをつけて合計5点以上が骨折のハイリスクとなります。
次は治療です。人工股関節全置換術は傷んだ股関節の部分を取り除き、金属やセラミックの人工関節に置き換えます。これまで骨を削ったり人工関節を設置したりするときは、術者の経験や術中のレントゲン画像などに頼っていました。ナビゲーション支援手術にすると、コンピューターが患者の骨の形や人工関節、手術器具の正確な位置と角度をモニターに表示。医師はそれを見ながら手術をします。コンピューターは情報を示すのみで、手術操作には関わりません。このナビゲーションとロボットが合体したのがロボティックアーム支援手術です。位置確認機能に手術機器を支えるロボットアームを追加し、医師の操作を正確かつ安全に支援するシステムです。