肥後医育塾公開セミナー

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令和7年度 第3回公開セミナー「AI×ロボット×外科医療」

【講師】
済生会熊本病院
呼吸器外科主任医員
大隅 祥暢

『【講演2】未来へつなぐ肺がん手術』
緻密な手術操作が可能に


  がんの中で死亡数が多いのが肺がんで、呼吸器外科は主にその肺がんを診療しています。診療で多く用いられているのは胸部X線写真です。胸の中にはたくさんの臓器が入っており、一枚の写真に写し胸の中を想像しなければならず、これを読み解くにはトレーニングが必要です。
 呼吸器診療に慣れた人間から見れば「影があるな」と気付くことも、そうでない医師は見落とすかもしれません。そこでAIが「ここが怪しい」と表示することで異常に気付くことができます。このシステムは既に多くの施設で導入されています。AIによって見落としを防ぐことができるようになりましたが、AIが指摘したものが治療が必要な異常かどうかは医師が判断しなければなりません。
 呼吸器外科医は、患者の呼吸機能を見て手術できるかどうかを判断します。肺をどれくらい切除するか、手術後に呼吸機能がどのくらいになるかを計算します。毎回計算機で行っていた計算も、個人用の計算ツールを作成したことで、患者の呼吸機能と切除する肺の範囲を入力すれば簡単に行えるようになりました。業務時間の短縮につながり、計算の確認もしやすくなりました。
 呼吸器外科の手術、特に肺がんは胸の横側から手術をします。かつては開胸手術といい、側胸部を大きく切開し骨を切り手を入れて、直接胸の中を見ながら行っていました。その後、胸腔[きょうくう]鏡手術が登場。肋骨[ろっこつ]の間からカメラを挿入し、胸の中をモニターで見ながら小さな傷口で手術することが可能になり、患者の負担は大きく低下しました。
 そしてロボット手術の誕生。当院ではダヴィンチというシステムを使用しています。1、2センチ程度の傷口からロボットのアームが患者の胸の中に入っていきます。アームの先に専用の器具を装着して手術をします。ロボットが勝手に動いて手術をするわけではなく、外科医がモニターを見て両手両足を使いながらロボットを操作して行います。手振れを抑えやすく、かなり細かい作業ができるのがロボット手術の大きな特長で、より緻密な手術操作が可能になっています。
 最後は医学教育の話です。学生が興味を持てる実習を行いたいといろいろな取り組みをしてきました。その一つが摘出肺の3Dモデル作成です。摘出した肺の検査を行う前に、肺の3Dデジタルデータを作成します。それを学生に見せて肺がんの場所を示すことが可能になりました。医学教育のデジタル化はどんどん進んでいます。