肥後医育塾公開セミナー

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令和7年度 第3回公開セミナー「AI×ロボット×外科医療」

【講師】
熊本大学大学院
先端科学研究部医工学部門教授
諸岡 健一

『【講演1】医療×AIって何?』
画像認識でがん診断支援


  私は医師ではなく工学研究者で、画像を使った情報処理に関する研究を行っています。AIの医療への応用では、CTやMRIなどの医療画像から対象となる臓器などがどこに写っているか、内視鏡画像に写っている臓器のどこに腫瘍があるのかなどでよく利用されています。
 私たちの研究グループでは3次元画像認識AIを使って、がんの診断を支援するシステムというプロジェクトを進めています。対象としているのはがん診断方法の一つである細胞診です。例えば子宮がん検診のように、臓器から採取した細胞をスライドガラス上に広げて細胞標本を作り、それを細胞検査士が顕微鏡を通して観察します。それでがんになりかけの前がん細胞やがん細胞を見つけるというやり方です。
 日本では子宮がん検診を1万人が受けたときに前がん細胞やがん細胞が含まれるのは120人程度と言われています。細胞検査士はほとんど正常細胞を見ている中で、ごく少数の前がん細胞やがん細胞を見つけなければならないという大変な作業を行っています。それを細胞標本の画像を使って、正常細胞なのか前がん細胞なのか、がん細胞なのかを識別することで支援するシステムを開発しています。
 外科治療に関して、リアルタイムに臓器の変形を推定する技術によって手術を支援するシステムについてお話しします。対象としているのは内視鏡手術で、特に腹部にある臓器に対する腹腔鏡手術です。開腹手術はかなり大きな傷をつけて、直接体内を見たり触ったりするため患者への負担が大きくなります。それに比べると内視鏡手術は負担が小さく早期に社会復帰できます。一方で、直接見たり触ったりすることができず、内視鏡の映像を見て患者の3次元情報を頭の中で推定しながら手術道具を扱うため、かなり頭を使う手術と言われます。それを支援する仕組みとして内視鏡手術ロボットがあります。
 さらに情報処理の立場からの手術支援として重畳表示という技術があります。実際の内視鏡の映像に、手術前の臓器などの映像を重ね合わせて表示することです。これ自体は一般的な技術で、手術前に撮影した画像から臓器モデルを作りますが、臓器は術中に触ると形が変わっていくのでそれに対応できていませんでした。そこで私たちの研究グループではAIを使ってリアルタイムに臓器の変形を推定するという技術を開発しています。そして、人体のあらゆる部位の診療科の先生方と共同でAIを導入した研究を進めているところです。