肥後医育塾公開セミナー

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令和7年度 第2回公開セミナー「AI時代の最新医療」

【講師】
熊本大学大学院生命科学研究部 脳神経内科学教授
植田 光晴

『【講演3】神経の病気に対する最新治療』
原因特定までの時間短縮


  神経領域の治療法は、疾患修飾療法と対症療法に分類されます。対症療法はよく聞かれると思いますが、病気の症状を緩和する治療です。一方、疾患修飾療法はなじみのない言葉かもしれません。その病気の原因そのものを取り除く治療です。雨漏りに例えると、バケツを持ってきて濡れるのを防ぐのが対症療法で、雨漏り自体を防ごうと屋根に上って修理するのが疾患修飾療法ということになります。この二つを完全に切り分けずに、両方の要素を持つ治療もあります。
 かつては神経の領域は診断が難しく原因も分からないということが多く、対症療法で症状をとる治療のみでした。最近は診断がきちんとできて原因もだんだんと分かってきたことで、原因を改善して病気の進行を抑制する疾患修飾療法に発展してきています。
 アルツハイマー病であればアミロイドβタンパク質やタウタンパク質といったように、病気の原因が分かれば治療薬ができる可能性があります。人工的な抗体を使ったり、遺伝子の力を利用したりして原因を取り除く。そういう治療法の開発が進んでいます。
 その中でAIがどう関わってくるかですが、治療薬を作るにはまず原因を特定し、薬の候補を見つけて、さらにそれが本当に使えるか確認する必要があります。それぞれのステップに場合によっては10年ずつかかったりもしますが、AIの発展で時間を短縮できるのではということが期待されています。
 AIが実際にどのように学習するかというと、大量のデータから見つけたパターンで新しいデータを判断できるかどうかです。そしてこれをどんどん繰り返すことで学習するというシステムです。
 医療とAIで問題になるのは、データが少ないものや、まれな現象や病気への対応です。AIに説明責任はありませんので現状では、医療従事者を補助する形でAIを活用するのが望ましいと思います。内視鏡やMRI、CTの画像診断のサポートが一番進んでいるようです。診断精度の向上は、特に専門領域ではないものの診断に役立ちます。
 神経疾患は記憶力が低下したり、会話が困難になったり、食事が取れなくなったりさまざまなことが起こります。誰にでも可能性があります。すぐに命に関わることは多くはありませんが、要介護の原因になりやすいと言われます。高齢化社会と神経疾患については、年齢が高くなると神経の病気になりやすいということがあります。特に多いのは認知症や脳血管の病気です。AIは認知症のスクリーニングにも活用されています。