肥後医育塾公開セミナー

肥後医育塾公開セミナー
肥後医育塾公開セミナー

令和7年度 第2回公開セミナー「AI時代の最新医療」

【講師】
熊本大学病院 消化器内科診療講師
長岡 克弥

『【講演2】口の中の変化で食道がんを早期発見』
AIが検査受診を後押し


  食道がんとAIについて話します。飲み込みにくいなどの症状が出ればがんがかなり進行しているかもしれません。消化器内科では、内視鏡で負担なく取れるぐらいで見つけたいと考えています。胃カメラは必ず食道を通るので見つかります。ただ、胃カメラの検診というのはなかなか受けていただけません。
 食道がんによる死亡率は40代半ばから急激に増えてきて、ピークは70代です。危険因子は飲酒と喫煙。食道がんを持っている人の口の中の上あごの部分には、飲酒や喫煙が原因と思われる変化が出ていることが見つかりました。
 口の中は、胃や食道が専門の消化器内科では分かりにくい場所です。そこで5千枚ほどの口の中の画像をAIに学習させたところ、8割ほどの確率で食道がんがある人とない人の見分けがつくようになりました。口の中の上あごの模様と食道がんリスクとの関連を、AIの技術を応用して見つけたということです。
 実用化を計画しているのが、スマートフォンのモバイルアプリを使ったシステムです。口の中を家族などに撮影してもらい、年齢や性別、飲酒や喫煙の有無などを入力すると、「大丈夫です」とか「胃カメラを受けた方が良い」とかを判定します。企業と連携して医療機器として使えるものを作ろうとしています。
 一方、AIで正しく判定できるのか、どのように判断しているのか分からないという不安もあります。そこで、どこを認識して悪いと判断したのか表示するホワイトボックス型のシステムを作ろうとしています。AIが間違った認識をした場合、人がきちんと修正できるよう組み立てます。
 ただし、このシステムが診断するわけではありません。「胃カメラを受けた方が良い」と促して内視鏡検査につなげ、食道がんかどうかを診断するという流れです。最終的な判断とそれに伴う責任は人間が持つ「ヒューマン・イン・ザ・ループ」の考え方です。
 最後は肝疾患です。肝硬変や肝がんに進行する恐れがある脂肪肝に関して、「熊本脂肪肝プロジェクト」のウェブサイトで、年齢や血液検査などで出た値を入れると、「肝硬変かもしれません」などの識別をします(左記QRコードからアクセスを)。
 食道がんや肝障害は進行するまで自覚症状がほとんどないので、積極的に健康診断を受けていただきたいと思います。最新技術を活用して本当に治療が必要な人を適切に見つける取り組みを続けます。