肥後医育塾公開セミナー

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令和7年度 第2回公開セミナー「AI時代の最新医療」

【講師】
熊本大学病院 血液内科・医療の質安全管理部診療准教授
立津 央

『【講演1】AI時代における血液がん治療の最前線』
患者と治療考える時代に


  血液の病気で一番多いのは悪性リンパ腫で、全がん種の7番目となっており、今回、悪性リンパ腫を中心に話します。治療法は主に抗がん剤と分子標的薬の2種類となります。現在はがん細胞だけに効果を発揮し、正常細胞にはなるべく影響しない分子標的薬の開発が進んでいます。また、分子標的薬だけを組み合わせて抗がん剤を使わないという臨床試験も行われています。
 悪性リンパ腫の中で一番頻度の高いびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療では、抗がん剤とリツキシマブという分子標的薬の組み合わせが効果を発揮し、多くの患者さんが治癒を目指せますが、再発したり悪化したりする患者さんに対して治療法の開発が引き続き研究されています。
 その中で、私たちが医師になった時代には想像もつかなかったことですが、今は遺伝子治療というものが実臨床に導入されており、CAR‐T(カー・ティー)治療といいます。患者さん自身の免疫をつかさどるT細胞に遺伝子改変を加えて、がん細胞を攻撃する能力を高めた上で再び患者の体内に戻すやり方です。
 次に、今後のAIとゲノム医療についてです。患者のデータを集めてAIで解析してもらい、一人一人の患者さんに対して治療効果や副作用の起こり方をあらかじめ予測して、治療を始める前より安全で効果的な治療方法を見つけていく、これが目標になると思われます。
 ただ、AIを使った診療が進むとともに考えなければいけないことがあります。AIは学習データに依存しているので、そのデータがどこから来ているかを理解することが、まず大事になります。間違ったデータが入ったときには適正でない診断や治療がされることがあります。正確性の担保がまず医療者側に求められます。
 また、信頼性の確保の問題で、AIが出した結果に基づいて治療が行われた場合に、誰が責任を持つかということです。やはり現段階ではAIは補助的なもので、最終的には人がしっかり判断すべきと考えております。
 血液のがん治療、他のがん種もそうですけど、治療選択肢がどんどん増えています。そのため、治療法は多様化していて、どの治療をどのタイミングでどのように使用したらいいのかという判断が、難しい時代になっています。その際にAIから大きな助言が得られるのではないかと思っています。「シェアード・ディシジョン・メーキーング」(患者共同参画)と呼ばれる、患者さんと一緒に治療法を考えていく時代が来ています。