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【講師】 |
『【講演2】画像診断へのAIの最近の応用』
MRIの高画質化に貢献
「医療画像解釈へのAIの応用」と「人工知能の仕組みと画質改善・変換への応用」などについてお話しします。この分野は実は熊大が一番得意なところです。放射線科領域へのAIの応用は非常に多岐にわたっており、医療全体での75%が放射線科向けというぐらい研究が盛んです。
今のAIは画像を学習できます。ただ、画像と言ってもAIから見ると「数値の列」です。学習の仕方ですが、簡単に言うと、全然何も知らない赤ん坊に画像を見せ、「良性か悪性か当てなさい」ということを繰り返します。当然、当たらなさそうに思えますが、確率の問題でいっぱい作ると半分ぐらい当たってしまいます。
当たっている間に、画像の中になんとなく良性か悪性かを見分けるような特徴を、この赤ちゃんは学習してしまう。これがAIの学習です。ただ、繰り返しで成績が向上しても、意味は分かってない状況だったりします。画像診断AIがすごいところもありますが、失敗もするというのはこういうところです。実用化されているAIは割とこのようなものが多い状況です。
次に、熊大が得意な画質改善や変換の応用について話したいと思います。ノイズ低減、画質改善処理というのは、放射線科では必須です。ザラザラしたMRI画像を、きれいにするという感じです。
どうして、きれいなMRIを最初から撮らないのかと思われませんか。実際には撮れるのですが、きれいなMRIやCTを撮ろうとすると、長く寝ていてもらったり、被ばく量が多くなったりと、患者に負担がかかってしまいます。そのため最低限の画質で撮って、そこからきれいな画像を作りたいわけです。
画像をきれいにしようと研究を始めたのがGAN(ギャン)と呼ばれるものです。画像を作るAIと、できた画像が本物かどうか見破るAIの二つを作れば、お互いに競い合ってきれいな画像ができるというもので、キヤノンとの共同研究でした。これは2020年に、MRIをきれいにするディープラーニングを用いた世界初の技術として発売されました。
画像処理でノイズを取り除くとだいたいボケますが、この技術を使えばノイズを取り除いても全然ボケません。今、この技術はすごく発展しており、近い将来ほとんど全てのMRIはAIを使った画像になるのではないかと思っています。熊大ではこの画像をきれいにするディープラーニングの研究を続けています。今ではノイズ低減だけではなくて、高解像度画像を作るという研究もやっています。