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【座長・講師】 |
『【講演4】新興・再興感染症の不思議』
ウイルスは生態系の一部
ウイルスは約30億年前から地球上に存在していることが分かっています。野生動物を宿主にして生き延び、約1万年前に始まったウシやブタなどの家畜化とともに、ウイルスが人にも感染するよう変異を遂げました。そのときから人獣共通感染症が始まったと考えられます。
エイズを引き起こす「HIV(ヒト免疫不全ウイルス)」は、3万2千年前のサルに起源があります。やがてチンパンジーやゴリラが宿主になり、約150年前から人間も感染するようになりました。
天然痘はエジプトのミイラからも見つかっていて、日本でも奈良・平安時代の記録に登場します。1796年になって英国人医師ジェンナーが天然痘の予防接種法を開発。幕末の日本でも予防接種が始まりました。そして1980年に世界保健機関(WHO)が根絶を宣言しました。熊本医科大学(現・熊本大医学部)出身の故・蟻田功先生がWHOの天然痘根絶対策本部長を務められました。
ただ、天然痘に近いウイルスは世界に存在していて、近年はアフリカのコンゴなどで「エムポックス(サル痘)」が大流行し、予防策として天然痘ワクチンが有効なことが分かったため、熊本のKMバイオロジクス社が生産したワクチンが活用されました。
新型コロナ感染症は記憶に新しい新興感染症です。そのウイルスの起源については諸説あります。@コウモリなどから中間宿主を経て人に感染A最初の宿主から直接人に感染B中国で輸入された冷凍食品がウイルスに汚染されていたC中国・武漢のウイルス研究所から漏れ出た−など。
WHOは調査団を中国に派遣しましたが、起源は不明との見解でした。後に調査団の前に中国の機関が現地調査を行い、その際のデータを隠していたことが判明。米国の下院や中央情報局(CIA)は武漢研究所からのウイルス流出説を主張しています。
コロナウイルスは変異を繰り返し、感染力は強いですが、現在は重症化につながる病原性が低くなりました。ただ感染すると、持病のある人などは死亡するケースもあり、今も集団感染は起こっています。変異は今後も繰り返すとみられることから、熊本大学では新型コロナウイルスを広範に中和する抗体をつくり、特許を取得しました。
地球には人間が生まれる前から、さまざまなウイルスが存在し、生物多様性や食物連鎖、生態系に影響しています。人間もその中で存在しているわけです。そう考えると今後の社会は、地球の生態系の持続可能性を最優先にすべきではないかと思います。