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【講師】 |
『【講演3】あなたの身近にある新興・再興感染症』
ワクチンで肺炎の予防を
呼吸器系の感染症として、「肺炎」や「結核」「非結核性抗酸菌症(NTM)症」についてお話します。肺炎による死亡者の95%は高齢者です。肺炎の原因菌で一番多いのが肺炎球菌です。乳幼児では咽頭や鼻腔に定着していることが多い菌で、小児では主に中耳炎や髄膜炎、高齢者では肺炎の原因となります。
肺炎球菌には抗菌薬のペニシリンが有効です。しかし、ペニシリンが効きにくい菌が増えています。増加の原因として「かぜ」などのウイルス感染症に抗菌薬が多く処方されてきたことが考えられ、現在は薬剤耐性(AMR)対策として、ウイルス性の上気道炎には抗菌薬を処方しない取り組みがなされています。
肺炎球菌肺炎で怖いのは重症化や死亡が多いことです。高齢者では肺炎に敗血症を合併して死亡する方が多く、使用した抗菌薬が有効にもかかわらず入院当日や翌日に亡くなる方も多くみられます。重症化を防ぐには、肺炎になる前からワクチンで予防しておくことが極めて重要です。
肺炎球菌ワクチンについて、肺炎球菌には免疫反応が異なる90種以上の型がありますが、そのうち20種類以上に対応するワクチンが複数あり、菌全体の4割から7割をカバーします。高齢者では65歳の定期接種のほか、任意接種が可能なものもあります。詳細についてはかかりつけ医に相談してください。
次に結核についてお話します。日本はようやく結核の「低まん延国」に至りました。現在は結核の多い時代を過ごした80歳以上の高齢者や20歳代を中心とした外国出生者の発症が多いのが特徴です。また、免疫機能が低下している人や糖尿病、透析中の人なども注意が必要です。
最後に最近注目されている「非結核性抗酸菌症(NTM症)」にも触れておきます。NTM症は結核とは逆に患者数が増加しており、年間の発症者と死亡者数は結核を超えました。
原因菌は結核に似た菌ですが、水中や土壌などの環境に存在していてヒトからヒトの感染はありません。7〜8割の人はMAC(マック)と呼ばれる菌が原因で、肺MAC症とも呼ばれます。中高年の女性に多く、あまり進行しない人から高度に進行する人まで個人差が大きいのも特徴です。根本的な治療は見つかっていませんが、排菌が続く方や進行する方には複数の薬剤を組み合わせて治療します。
結核、NTM症ともに特徴的な症状は少ないので、たんを伴うせきが2週間以上続く、たんに血がまじることがある場合には、医療機関を受診してください。