肥後医育塾公開セミナー

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令和6年度 第3回公開セミナー「新興・再興感染症の不思議 正しく知って正しく防ぐ」

【講師】
地域医療機能推進機構人吉医療センター副院長
田浦尚宏

『【講演2】いま地域でとりくむ予防策』
平時から行動訓練を実施


  私は人吉医療センターで感染制御専門ドクターとして、普段は新型コロナなどの感染症の診察を続けています。
 感染症はこれまで世界各地で流行を繰り返し、私たちは脅威にさらされてきました。一方で飛沫[ひまつ]感染、接触感染、空気感染などの感染のメカニズムが解明され、マスク着用やせきエチケット、手洗いや手指消毒、換気、汚染部位の清掃と消毒など、個人レベルでの対策が可能になり、一定の予防効果が期待できるようになりました。
 感染症対策は個人での予防はもちろん、地域での一体的な取り組みが重要になります。人吉球磨地域ではコロナ禍以前から関係機関が連携し、感染症対策訓練を実践してきました。
 2020年、コロナ禍が始まると、当院も一時的に病床が逼迫[ひっぱく]しました。基礎疾患を持つ高齢者にも感染が拡大。新型コロナの広がり方は、インフルエンザとは全く違いました。ある特別な1人の感染者が多数を感染させ、クラスターと呼ばれる集団感染を起こす特徴がありました。無症状の感染者がいる上、潜伏期間でもウイルスを出すため、感染経路の追跡は困難を極めました。ウイルスが次々と変異することも対応を難しくしました。
 人吉球磨地域ではパンデミック後も平時から実動訓練、連絡訓練などを続けています。過去の事例を振り返るだけでなく、状況の変化に対応した新たな対策、変化する新興・再興感染症に対する持続的な取り組みを盛り込んでいます。具体的には@保健所と消防機関による患者移送訓練A地域の医療機関や関連機関による合同訓練B感染症関連の講演会C救急車内にウイルス除去フィルターを装着し搬送する訓練D関連機関の連絡訓練−などです。
 対策立案にはシナリオを想定する想像力が重要で、訓練の持続性も求められます。また、主に対策に当たる組織や専任担当者を置く必要があると考えています。人吉球磨地域はコロナ禍のさなかに豪雨災害も経験。感染予防と防災をセットにした取り組みを文化として継続する方法もあるのではと思っています。
 当院では医療が逼迫しないよう、情報共有はウェブで、連絡はSNSにしました。感染流行期の情報交換は週1回または2週に1回とし、地域の感染の広がりや病床の状況、流行している病状の特徴、逼迫時の在宅療養状況などを確認できるようにしました。
 こうした体制を長期に持続できるよう、平時から地域のクリニック、高齢者施設、薬局、保健所、消防機関などとの関係を大切にしています。