【座長・講師】 |
『【講演4】自分そして周りのことを考えてワクチン接種を決めよう』
専門家の情報得て判断を
ワクチン接種に対する人々の考え方や行動についてお話します。まず二つの調査を紹介します。
新型コロナワクチンが開発され、医療従事者などを中心に接種が進められた2021年2月、ワクチン接種に関する全国調査が行われました。これによると、当時の11・3%の人が接種をためらっていたことが分かります。
接種を受けないと回答した人は「副作用が心配」「効果がないと思う」「自分は感染しない」「自分は重症化しない」「接種を受ける時間がない」−などを理由に挙げました。一方で、接種を受けたいと回答した人は「自分が感染しないか心配」「自分に重症化のリスクがある」「無料だから」「周りの人に感染させたくない」「社会のために必要」−などを理由としました。
また、新型コロナが2類相当だった23年1月と5類移行後の24年2月に、熊本大学が熊本県民を対象に実施した調査結果を紹介します。
新型コロナの流行に対し、適切な行動を知るための有用な情報源は何かという問いに、多くの人が「テレビや新聞」を挙げました。また、ハンセン病とエイズについて同じ質問をしたところ、「テレビや新聞」よりも「パンフレット」「広報」「研修会」「シンポジウム」などが正しい知識を獲得するのに役に立ったと多くの人が答えました。
この結果から「時間をかけ専門家が解析し、責任を持って伝えた情報が『正しく有用』と受け取られた」と理解できます。
感染症がまん延した場合、行政は公衆衛生の観点から個人よりも集団や社会の利益を優先します。新型コロナワクチンについては、接種は強制ではなく医療者のアドバイスを受けながら、自分でワクチン接種は有用かどうかを判断していくことになります。
この時、医療者の役割は複雑です。新しい感染症については知識や経験が不十分な点があり、科学的な根拠が乏しいケースがあるからです。普段は患者個人の健康や利益を優先すればよいのですが、同時に社会全体のことも考えなければなりません。
健康とは肉体的、精神的、社会的に全てが満たされた状態です。従ってワクチン接種は予防効果と副反応リスクとの釣り合いだけでなく、接種時の体調、個人の権利、周囲を思いやる道徳観をバランスよく考慮して決める必要があります。
ワクチン接種を受けるか受けないか、自分にとって何がベターかを医療専門家に相談しながら、最新の情報にも触れて総合的に判断する必要があるでしょう。