【講師】 |
『【講演D】HPVワクチンの実際』
キャッチアップ接種 9月末までに開始を
子宮頸がん予防のためのHPVワクチンは現在、2価・4価・9価の3種類があります。2価でも感染に対し65.4%に有効で、9価になると88.2%に有効です。
HPVワクチン接種は、まだ感染していない初性交経験前に接種することが最も重要です。厚生労働省の調査によると、初性交年齢は16〜18歳が一番多く、12歳ごろから増えていきます。そのためHPVワクチン接種の推奨年齢は小学6年生〜高校1年生相当の女性で、標準接種を中学1年生としています。なおこのワクチンは、すでにHPVに感染している人への治療効果は全くありません。
HPVワクチンの定期接種で日本は他国よりも遅れ、2013年4月に始まりましたが、直後から副反応とは断定できない多様な症状が報告されました。その際、厚生労働省は副反応に関する十分な情報提供ができなかったため、定期接種開始のわずか2カ月後にワクチン接種の積極的勧奨を差し控えました。
その後、世界保健機関(WHO)はワクチン接種に伴う一般的反応についての概念「予防接種ストレス関連反応(ISRR)」を提唱しました。ワクチン接種前後に起こる、しびれ、目まい、失神などの「急性ストレス反応」と、接種数日後に起こる脱力、まひ、異常な身体の動き、言語障害、学習能力の低下などの「解離性神経症状的反応」を挙げ、対応マニュアルを整備しました。
その後、日本はHPVワクチンの積極的勧奨の差し控えを終了し、2022年4月から12〜16歳女性を対象に定期接種を公費負担で再開。接種機会を逃した17〜27歳を対象に、3年間の期間限定で「キャッチアップ接種」を始めました。
HPVワクチンは半年間に2〜3回受ける必要があります。キャッチアップ接種は来年3月に終了するので、1回目の接種は今年の9月30日までに受けることができれば、自己負担はありません。対象者は1997年4月2日〜2008年4月1日生まれの女性です。厚労省ウェブサイト「もっと知りたい 子宮頸がん予防」に申し込み方法などが紹介されています。
HPV感染によって男性も中咽頭がんや肛門がんなどを発症します。今後は男性も含めた感染予防が望まれます。