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『【講演C】子宮頸がんとヒトパピローマウイルス〜身近なウイルスが原因です〜』
自覚症状に乏しいがん 若い女性に増加
日本では年間約3万人が子宮頸がん(子宮頸部上皮内腫瘍を含む)と診断され、約3000人が亡くなっています。患者数・死亡者数とも近年増加傾向にあり、特に50歳未満の若い世代で増加しています。
子宮頸がんの原因の95%以上が、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染です。ウイルスは性交渉で感染しますが、約90%の方は免疫の働きによりウイルスを排除できます。ただ、約10%の方は免疫がうまく働かず、ウイルスを排除できません。この状態を持続感染と言い、この状態が続くことで、細胞が異形細胞に変化し、前がん病変につながっていきます。高度の前がん病変の約10%が5年以内に浸潤癌に進行します。
子宮頸がんは早期がんの段階では症状に乏しく、検診でのみ見つけることができます。
日本の子宮頸がん検診では、20歳以上の女性に対し2年に1回の細胞診を勧めています。ただ、細胞診による前がん病変の検出精度は50〜70%といわれており、がんを見逃してしまうことがあります。そこで国の検診実施指針が改訂され、本年4月から精度の高いHPV検査単独法の導入を市町村が選択できるようになりました。
市町村がHPV検査単独法を選択した場合は、20代についてはこれまで通り細胞診を2年に1回実施。30〜60歳ではHPV検査(単独法)を5年に1回行います。HPV検査で陰性なら、次の検査は5年後。陽性であれば細胞診を行い、そこで異常がなければ1年後に追跡検査(HPV検査)となります。細胞診が異常の場合は確定精検を行います。
HPV検査の良い面は検診の精度が高まることに加え、30歳以上で検診間隔が2年から5年に延長できることによる負担軽減です。その一方で悪い面もあります。治療の必要のない前がん病変を見つけてしまうことや、前がん病変でない場合でも陽性となるケースがあります。
世界に目を向けると、世界保健機関(WHO)は、各国の子宮頸がん死亡率を10万人当たり4人以下にして「子宮頸がんのない世界」を実現することを目標に、2020年に世界戦略を発表しました。日本にも子宮頸がんワクチン接種の普及を含め、子宮頸がん撲滅に向けた積極的な姿勢が求められます。