【講師】 |
『〈講演@〉知らぬ間に進む肝臓病・肝がん〜手遅れになる前にできること〜』
脂肪肝に注意 早めの健診心掛けて
肝臓はダメージを受けても、自覚症状が現れにくく、健康診断で指摘されるケースが少なくありません。健診で見つかる肝機能障害の原因の多くは脂肪肝で、全体の約60%を占めています。脂肪肝は、脳卒中や心筋梗塞などの脳心血管疾患、大腸がんなど肝外悪性腫瘍、肝硬変や肝がんなどの肝関連疾患に進行しやすいことが分かっています。肝がんの原因は、以前はウイルスの割合が高かったのですが、近年は脂肪肝・脂肪肝炎が第1位となっています。ちなみに最近の統計では、熊本県は肝がんの粗死亡率が全国でワースト5位であり、一層の対策が必要です。
お酒が原因でないメタボ脂肪肝患者は非アルコール性脂肪性肝疾患と呼ばれます。そのうち10〜20%は、肝障害を伴う非アルコール性脂肪肝炎で、放置すると肝硬変や肝がんに進むことがあります。
治療の第一歩は食事や運動など生活習慣の改善です。熊本大病院が2021年に「熊本脂肪肝プロジェクト」を始動させました。プロジェクト名でネット検索し、FIB-4index(フィブフォーインデックス)計算サイトで、年齢や健診時の血液検査の値などを入力すると、「経過観察」「注意」「危険域」の3段階が判明します。もし「危険域」なら、そのスマホ画面から肝疾患相談室への連絡が可能で、そこから県内各地の肝疾患専門医療機関へ橋渡しします。
お酒も肝障害の要因の一つです。1日の適量は純エタノール値で20グラム以下。アルコール5%のビールで約350ミリリットル、20%の焼酎で約半合です。前述のサイトでは「飲酒習慣スクリーニングテスト」もでき、どんなお酒をどの程度飲んだかを入力すれば適量の目安が分かるので、利用してみてください。
肝障害の原因には肝炎ウイルスもあります。以前はC型肝炎が多かったのですが、良い治療薬が登場し、治るようになりました。B型肝炎患者は世界的には増加が続いています。日本では16年から、1歳未満の乳幼児に対するB型肝炎ワクチン接種が始まりました。一方で、思春期以降の世代でのタトゥー(入れ墨)やピアスなど、血液を介した感染に加え、性交渉による感染拡大が懸念されています。
このほか、風邪薬や鎮痛薬を一度に大量服用すると肝障害を起こすことがあります。薬や健康食品も、体質により障害が起こることがあるため注意してください。
肝硬変や肝がんもかなり病気が進行しないと症状が出ません。肝機能の異常は血液検査で見つかります。健診や人間ドックで肝臓の状態を積極的にチェックしましょう。