肥後医育塾公開セミナー

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令和5年度 第2回公開セミナー「耳、鼻、のど、皮膚のその症状、気になりませんか?」

【講師】
熊本大学大学院生命科学研究部
皮膚病態治療再建学講座 診療助手
栗山 春香

『【講演C】ほくろと皮膚がんの見分け方〜そのほくろ大丈夫ですか?〜』
皮膚がん主原因は紫外線 症状の特徴知り、早期対策を


  皮膚がんは正しい知識があれば、自己チェックで早期に見つけることができます。
 まず、多くの種類がある良性腫瘍について話します。中でも、なじみがあるのが色素性母斑(ほくろ)です。生後3〜4歳で発生し増加します。例外として、出生時から存在する巨大先天性色素性母斑もあり、特に手のひらや足の裏で大きさが6ミリを超える場合、悪性かどうか検査する必要があります。「脂漏性角化症」も良性腫瘍で、老化により生じるため老人性いぼ≠ニ呼ばれます。
 次に皮膚の構造を説明します。皮膚は表皮、真皮、皮下組織の3層から構成され、表皮の中に角質細胞、顆粒細胞、有棘細胞、基底細胞、そして基底層に黒色色素のもととなるメラニンを産生するメラノサイトがあります。皮膚の悪性腫瘍はそれぞれの箇所で発生します。
 表皮の基底細胞から発生するのが基底細胞がんで、皮膚がんで最も多い悪性腫瘍です。命に関わることはほぼありませんが、局所で広がる力が強いため、腫瘍が小さい早期に発見し、手術することが大切です。
 有棘細胞に発生するのが有棘細胞がんです。高齢者の顔面や手の甲に出ることが多く、硬くなって壊死を伴い、ただれて出血することもあります。また特有の悪臭を伴う場合もあります。治療は手術のほか、放射線療法、転移病変がある場合は化学療法を用います。
 表皮基底層のメラノサイトで起こるのが悪性黒色腫(メラノーマ)です。10万人に2人程度の希少がんですが悪性度が非常に高く、進行していると予後が悪くなります。早期発見には@左右非対称A境界が不鮮明B色調が多彩C直径6ミリを超えるD性状変化がある─の五つの特徴を知ることが重要です。治療は手術が第一選択肢で、進行度合いによって免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬を使った薬物治療をします。
 皮膚がんの原因は紫外線や外傷、放射線、やけどなど。特に、長年紫外線にさらされた高齢者に多発しやすいです。もともと色白で、日光に当たると赤くなるが黒くならない人は、特に皮膚ダメージを受けやすいため、外出時は日焼け止めクリームを塗り、つばの広い帽子をかぶるなど紫外線対策をしてください。
 皮膚がんの特徴を話しましたが、腫瘍が突然できた、血が出る、傷が治らない、色や形が変、手のひらや足の裏にでき、大きさが6ミリ以上─などに当てはまる場合、皮膚科を受診されることをお勧めします。