肥後医育塾公開セミナー

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令和5年度 第2回公開セミナー「耳、鼻、のど、皮膚のその症状、気になりませんか?」

【講師】
熊本大学大学院生命科学研究部
皮膚病態治療再建学講座 助教
金澤 早織

『【講演B】赤ちゃんのスキンケアとあざ』
摩擦禁止、保湿たっぷり あざ治療にはレーザー照射使用


  まずスキンケアについて話します。皮膚には「バリア機能」が備わっており、体内の水分が逃げるのを防ぎ、細菌や食物の侵入を阻止する働きがあります。赤ちゃんの肌は一見潤って見えますが、バリア機能が未熟で、皮脂も水分も少ない状態です。そのため湿疹を起こしやすく、食物が皮膚から入ると、食物アレルギーを起こす原因になります。
 スキンケアには、清潔・保湿・紫外線防御があります。キーワードは「摩擦は禁止・こすらない、保湿の量はたっぷりと」です。皮膚への摩擦を避けるために、ガーゼは使わず手を使って泡で洗います。保湿剤は擦り込まず、多いくらいの分量を使いましょう。ワセリンは、食べ物や尿・便からの刺激をはじく働きがあるため、口周りやお尻に最適です。赤ちゃんのうちから日焼け止めを塗り、紫外線から肌を守る習慣を身に付けてください。
 注意点が一つあり、湿疹になった場合は、保湿剤では治りませんので、早めに病院を受診してください。アレルギーを起こしやすい子どもが、成長するにつれて次から次へとアレルギー疾患を発症する様子を「アレルギーマーチ」と言いますが、その始まりが、赤ちゃんの時期の湿疹・アトピー性皮膚炎です。アレルギー疾患予防のためには、きれいな肌を保つこと、湿疹ができたら受診することが大切です。
 次に、赤ちゃんのあざについて説明します。いちご状血管腫は1歳ごろまで増大して徐々にしぼみますが、一度盛り上がった皮膚は傷痕が残ります。できるだけ傷痕を残さないために、早めの皮膚科受診が大切です。単純性血管腫は加齢により色が濃くなるため、生涯を通じレーザー治療を繰り返します。お尻以外にできる異所性蒙古斑は自然に薄くなりますが、洋服で隠れない場所で色が濃い場合や、早期の改善を希望されるときは、レーザー治療を行います。顔に生じる太田母斑は自然消失することはなく、レーザー治療が有効です。年齢と共に色が濃くなって広がり、思春期や20〜40代に現れることもあります。扁平母斑はレーザーの有効率が低く、照射によって逆に濃くなる場合もあります。
 赤ちゃんの時期にレーザー治療を行うメリットは多く、病変の面積が小さいため、少ない照射数で済み、皮膚が薄いためレーザーが深く届き、治療効果がより期待できます。生後早期に治療を始めれば、記憶が残らない2歳ごろまでに治療のゴールを達成することができます。あざに気付いたら早めに皮膚科を受診してください。