肥後医育塾公開セミナー

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令和5年度 第2回公開セミナー「耳、鼻、のど、皮膚のその症状、気になりませんか?」

【講師】
熊本大学大学院生命科学研究部
耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座 助教
竹田 大樹

『【講演A】耳鳴りの原因と診断』
難聴と密接な関わりも 危険なケースあり、早期検査を


  国民の10〜15%が耳鳴りを患っているといわれ、罹患者の約20%(約300万人)が重症です。年齢が上がると有病率も上昇します。
 耳鼻科の医師は、患者が「キーン」や「ピー」など高い音の耳鳴りを訴えると突発性難聴や加齢性難聴などを、「ゴー」や「ブーン」といった低い音の場合はメニエール病や中耳炎などを疑います。これらは自身にしか聞こえないことから自覚的耳鳴りと呼ばれます。
 一方、第三者にも聞こえる「ドクンドクン」や「ザー」という耳鳴りは、高血圧や頸動脈の狭窄、中耳の腫瘍などで血管の音が聞こえていることがあります。頭の動きや口の開閉によって起こる「トコトコ」「ポコポコ」という耳鳴りは、耳周囲の筋肉のけいれんや顎の関節の音である場合もあります。こちらは他覚的耳鳴りと呼ばれています。
 その他、耳鳴りは@治療可能な耳鳴りA治療が困難な耳鳴りB危険な耳鳴り―にも分類できます。@の多くは中耳から外耳で起こり、外耳道炎や耳垢、急性・慢性中耳炎などが挙げられます。Aは内耳から中枢神経、脳にかけての異常です。突発性難聴の後遺症やメニエール病、薬剤性感音難聴や内耳炎、遺伝性感音難聴、加齢性感音難聴、騒音性難聴、片頭痛などがAに分類されます。Bは脳梗塞や脳出血、頸動脈硬化、脳動静脈瘻、不整脈などが原因のため、急に耳鳴りがして手足のまひや強い頭痛が伴う場合は注意が必要です。
 次に、耳鳴りと密接な関連がある症状について話します。代表的なものが「難聴」です。補聴器などで難聴を改善すると耳鳴りの改善にもつながるとされます。「頭痛」も耳鳴りのある方の3〜5割が併発し、逆に頭痛持ちの2〜3割に耳鳴りの症状があるといわれます。「目まい」も耳鳴りを伴うことが多く、目まいの原因となっている病気の治療が重要です。この他「うつ病」も耳鳴りを患っている人の2〜5割が併発し、うつ病の治療で約8割の人に耳鳴りの改善が確認されています。
 残念ながら、現状では治療が困難な耳鳴りが大半を占めています。そのため、危険な耳鳴りと治療可能な耳鳴りを放置せず、原因を早期に発見することが最も大切です。
 一方で、治療が困難な耳鳴りに対しても、耳鳴り順応療法という、補聴器とカウンセリングを組み合わせる治療や、認知行動療法という治療があります。耳鳴りを完全に治そうと考えず、苦痛や症状を和らげる治療目標を立てることも有効です。