肥後医育塾公開セミナー

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令和5年度 第2回公開セミナー「耳、鼻、のど、皮膚のその症状、気になりませんか?」

【講師】
熊本大学病院
耳鼻咽喉科・頭頸部外科 講師
宮丸 悟

『【講演@】気をつけたい鼻とのどの症状』
悪性腫瘍、感染症に注意 気になる症状続いたら受診して


  まず鼻に関しての悪性腫瘍についてお話しします。鼻腔と副鼻腔にできる腫瘍の80〜90%が悪性といわれています。
 鼻腔・副鼻腔がんの初期症状は、鼻づまり、鼻血、頬のしびれ、流涙など、あまり特徴的なものはなく、早期に気付きにくいことがほとんどです。症状が片側のみで数週間持続する場合は注意が必要で、耳鼻咽喉科への受診が望まれます。悪化すると、眼球突出や歯のぐらつき、口蓋(上顎)や頬部の腫れ、口の開けづらさ、強い痛み―などの症状が出ます。
 治療は手術と放射線治療、化学療法を組み合わせて実施します。鼻腔・副鼻腔がんの5年生存率は55%で、予後が良くありません。これは早期に腫瘍が発見されにくいためだと考えられます。
 一方、のどで気を付けたい病気には炎症性疾患と悪性腫瘍があります。
 炎症性疾患としては、飲食物が気管に入るのを防ぐ喉頭蓋と呼ばれる場所に炎症が起こる急性喉頭蓋炎と、扁桃炎が悪化し扁桃の周りに膿がたまる扁桃周囲膿瘍に注意が必要です。
 どちらも初期症状は発熱やのどの痛み、だるさなど、風邪に似た症状ですが、悪化すると痛みが増し、つばも飲み込めなくなります。腫れが進むと、モゴモゴとくぐもった含み声になり、呼吸が苦しくなるほか、口が開けづらくなる場合もあります。このような症状は緊急の治療が必要となる可能性があり、要注意です。喉頭蓋の腫れが強くなると窒息の恐れがあり、のどを切開して一時的にパイプを通す気管切開術を行うこともあります。
 のどの悪性腫瘍である喉頭がんでは、3人に2人は声がれが初期症状として出ますが、残りの方はのどの違和感がある程度で、早期にははっきりとした症状が出ないのが特徴です。
 また、下咽頭がんも初期には特有の症状がなく、進行して発見されることが多い疾患です。
 いずれも、たばこや飲酒が関与しているといわれています。のどの違和感や固形物が通りにくいなどの症状が2週間以上続く場合は喉頭がんや下咽頭がんの恐れがあるため、ぜひ、耳鼻咽喉科を受診してください。進行すると声帯ごと摘出してしまうような手術が必要になる可能性もあり、早期発見が何よりも重要です。