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『【講演C】整形外科における腰痛の治療』
「保存療法」が第一の選択肢 原因と適応考え手術実施も
腰痛の原因はさまざまです。そのため医師は、最初に詳しく問診します。「腰痛はいつから」「きっかけは」「どれほどの痛みで、どのくらい困っているか(買い物はできる・仕事も家事もできないほど痛いなど)」「どんな時に痛むのか(いつも・朝起きた時・歩くと痛いなど)」「良くなっているのか・悪くなっているのか」―などです。
その上で、体の動きを見て身体所見を取り、画像検査をします。ただ、レントゲン検査では原因の特定が難しいため、通常は治療に使う神経ブロック注射を診断に使うことがあります。疑わしい箇所に注射をし、もし痛みが和らげば、そこが原因と分かるわけです。
腰痛の治療は、手術をしない「保存療法」が第一選択肢となります。これに、薬物療法、けん引や電気治療などの物理療法、ストレッチや理学療法士によるリハビリなどの運動療法、コルセット使用などの装具療法、そのほかブロック注射による治療―などを組み合わせます。
保存療法の中でも、自宅で簡単にできるストレッチ(体操)も有用です。さまざまなストレッチがありますが、あおむけになって膝を抱え込むようにして膝を胸に近づけ、腰の後ろを伸ばします。このほか「ジャックナイフ」と呼ばれる、しゃがんで足首をつかんだ姿勢で胸と太ももをくっつけ、そのまま膝を伸ばして、太ももの後ろのハムストリングを伸ばすストレッチも腰痛予防に効果的です。いずれも簡単なストレッチですが、お風呂上がりに10回行う程度で効果があります。
腰椎分離症では、青少年期にスポーツで腰椎を骨折し、そのまま骨がくっつかないと、分離すべりが起こります。最初の骨折時には痛みがありますが、しばらくして痛みが治まることがあります。その後、成人して再び腰痛を感じる人もいますが、全く感じない人もいます。
分離症の治療方針として、骨をくっつけることを目指すのであれば、半年間スポーツをやめてもらいます。そのため部活動を頑張っている生徒さんの場合は保護者を交えて相談し、一人一人異なる治療法を考えます。
「手術療法」は、保存療法で痛みがなくならない場合、原因と適応を考えて選ぶことになります。例えば、圧迫骨折に対する椎体形成術(BKP)のように30分ほどで終わる手術も出てきましたが、全てのケースでできるわけではありません。
腰痛で整形外科を受診するタイミングは、日常生活に困るほど痛い、痛みが1カ月以上続く、あるいは下肢のしびれや痛みが出てきた時とお考えください。