肥後医育塾公開セミナー

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令和5年度 第1回公開セミナー「その頭痛や腰痛、放置していませんか?」

【講師】
済生会熊本病院 脳卒中センター脳神経外科 部長
山城 重雄

『【講演A】命にかかわる注意すべき頭痛 脳卒中や脳腫瘍など〜いつもと違う頭の痛みは要注意〜』
「経験のない痛み」は要注意 速やかに医療機関の受診を


  頭痛は、頭痛自体が病気である「一次性頭痛」と、何らかの頭蓋内疾患により起こる「二次性頭痛」の2つに分けられます。
 一次性頭痛は命に別状のない片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛などです。二次性頭痛はくも膜下出血や脳出血、脳腫瘍、髄膜炎、脳炎などが原因で起こり、命に関わる場合があります。
 ここでは、二次性頭痛の原因となる疾患を紹介します。
 くも膜下出血は頭の中の脳動脈瘤が破裂することで起こります。再破裂を防ぐため48時間以内の外科治療が必要ですが、出血による脳自体のダメージも大きいため、現在でも非常に厄介な病気の一つです。くも膜下出血が起きると、これまで経験したことがない激しい頭痛に襲われます。一般には突然殴られたような頭痛と表現されますが、実際に患者さんに尋ねると、突然ではなく徐々に痛みが増し、数分後に経験したことがない痛みになったと話す方もいます。
 経験したことがない激しい頭痛に加え、いつもと様子が異なる、まひがある、しゃべり方がおかしい―などの症状があるときは脳卒中(脳の血管が詰まったり、破れたりする病気の総称)の可能性が高いため、すぐに救急車を呼んでください。
 最近は脳ドックを受ける人も多いため、破裂する前の動脈瘤がよく発見されます。これを未破裂脳動脈瘤と呼んでいます。破裂を恐れる人が多いですが、破裂しにくい脳動脈瘤の方が多く心配はありません。診療の際に患者とよく相談し、危険な動脈瘤の場合だけ、治療を勧めるようにしています。
 脳腫瘍の場合は、腫瘍が大きくなると、朝、目覚めた時に頭痛がするようになり、徐々に痛みが強くなります。さらに進行すると、目がかすんでぼやけたり、吐き気や嘔吐の症状が出たりします。腫瘍が限界まで大きくなると脳が圧迫され、脳ヘルニアを起こし致命的となります。これらの症状を、頭蓋内圧亢進症状といいます。
 このほかの二次性頭痛として、血管の壁が裂ける脳動脈解離や、脳静脈の血液が合流する場所に血栓ができる脳静脈洞血栓症、ウイルスや細菌が感染して起こる髄膜炎、筋トレなど力む動作や薬剤などが誘因で脳血管が縮んで起こる可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)、交通事故などの外傷や出産などで脳脊髄液が漏れ出て起こる脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)などがあり、頑固に長期間続く頭痛の原因であることがあります。
 既に頭痛持ちの方の場合、二次性頭痛かどうか分かりにくいことがありますが、@今までの頭痛とは違う痛みA痛みの頻度や程度が以前より多いB麻痺や目の症状があるC発熱を伴うD鎮痛剤が効かなくなった―といった場合はかかりつけ医への相談をお勧めします。