肥後医育塾公開セミナー

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令和5年度 第1回公開セミナー「その頭痛や腰痛、放置していませんか?」

【講師】
熊本託麻台リハビリテーション病院 脳神経外科 部長
村上 雅二

『【講演@】日常生活に支障をきたす厄介な頭痛』
片頭痛人口は約840万人 治療薬乱用などで慢性化も


  片頭痛を持つ人の中で日常生活に支障を来している人は74%程度。しかし仕事や行事を休まない人は68%程度にも上るとの報告があります。「ただの頭痛」と考え、頭痛くらい我慢するものと誤解があるようです。
 日本の成人で片頭痛がある人は約840万人もいます。片頭痛は予兆、前兆、発作および発作間欠期(片頭痛サイクル)があります。予兆は疲労感や集中困難、首や肩の凝り、光・音過敏などです。前兆はジグザグ模様が視野の中で広がる閃輝暗点が特徴です。20〜40代の女性に多く、男性の4倍に上ります。肩凝りは緊張型頭痛でも起こるため、うっかり頭痛薬を飲み過ぎると、薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用性頭痛)になる可能性があります。片頭痛は頭の片方にズキズキとした痛みがあり、日常的な歩行や階段昇降、お辞儀の時などに頭痛がひどくなり、吐き気や嘔吐、光過敏や音過敏の症状が現れます。
 片頭痛は、頭蓋内の硬膜血管に分布する三叉神経終末からカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)が放出され、その結果、血管が拡張し炎症を起こすことで生じます。
 治療には経口薬や点鼻薬、また皮下注射による急性期薬物療法があり、非薬物療法としては@部屋を暗くするA頭部を冷やし鉢巻きなどで圧迫するB植物などの緑色を見て安らぐ―などの方法があります。
 予防薬として、最近ではCGRP関連抗体薬が登場し、多くの片頭痛患者さんに福音をもたらしています。
 片頭痛は40歳を過ぎると多くの人が緊張型頭痛に向かいますが、一方で3%程度の人は慢性化します。その危険因子は、急性期治療薬の乱用や過度のカフェイン摂取、肥満、ストレスなどです。 緊張型頭痛は、頭痛の原因としては7〜8割と最多で2200万人もいるとされ、中高年に多く見られます。締め付け感がありますが、日常生活への支障度は低いです。体を動かしたり、入浴したりすると改善し、お辞儀をしても痛みはなく、吐き気や嘔吐もありません。
 アルコールで誘発される群発頭痛もあります。深夜に起こりやすく、興奮して落ち着きがなくなり、のたうち回る激烈な痛みを感じます。20〜40歳の男性に多く、女性の5倍です。
 片頭痛の慢性化を防ぐための普段の生活の留意点として、睡眠、食事、運動、リラックスすることを心掛け、ストレスをできるだけ減らしましょう。そして頭痛を誘発するお酒やたばこ、光、嫌な臭いなどを避け、薬を飲み過ぎないようにし、頭痛ダイアリーなどを使って服薬状況を記録しておきましょう。