肥後医育塾公開セミナー

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令和4年度 第3回公開セミナー「高齢者の「脳血管疾患」治療」

【講師】
熊本託麻台リハビリテーション病院 理事長
平田 好文

『【講演C】進化する回復期リハビリテーション〜わたしたちの挑戦〜』
退院後のリハビリ 継続重要 生活の再構築と社会参加へ


  リハビリテーションに対する考え方が近年、大きく変わってきました。以前のリハビリは、入院された方が自宅に戻れるよう訓練することでした。その結果、自宅に戻ってもテレビを見て何もしない、1日に500歩程度しか歩かないといった人が多く見られました。
 リハビリ施設を運営する者として、それではいけないと思いました。リハビリは訓練で患者さんの活動性を上げ、自宅で生き生きと暮らせるようにすることが目標です。回復期リハビリで身に付けた訓練を、自宅に戻ってから自分で続けることが重要になってきます。
 ところがコロナ禍になり、感染予防が求められました。病院は家族との面会を制限しなければならず、患者・家族との連携が不十分なまま在宅療養となりました。そのため患者さんもご家族も医療機関も在宅療養に対し、大きな不安を抱えました。そこで当院では、地域の方に向けて感染予防教室を開き、その中で当院のリハビリに対する考え方への理解を図りました。
 コロナ禍で不要不急の外出自粛や、在宅勤務が続きましたが、活動性が低下すると足が腫れます。体内の血流が停滞すると血栓ができやすく、認知症進行のリスクも高まり、転倒して骨折する人も増えます。私たちは、地域の皆さんに「感染ゼロの前に、生活不活発ゼロを目指そう」と呼びかけ、介護予防や認知症予防などへの取り組みが地域づくりにつながることを提案しました。
 2022年度「回復期から生活期までのリハビリテーションの効果に関する実態調査」(日本リハビリテーション病院・施設協会)によると、「回復期リハ病棟退院後の外来リハ、通所リハ、訪問リハは、共に生活活動性と活動範囲を向上させ、リハビリをしないとそれらが低下する」と報告しています。
 回復期リハビリを担う当院では「地域づくりセンター」を設置し、「脳卒中後両立支援ガイドライン」や支援マニュアルなどを導入。入院からの経過に沿って、入院時、回復期、退院前、退院直後、在宅生活までをトータルで支援する仕組みにし、ベテランのコーディネーターを配置しました。加えて、入院中に退院後の生活を予測したリハビリを行い、生活再構築のためのスケジュールを作ってケアプランに盛り込んでいます。退院後も入院時のスタッフが電話での聞き取りを行うなど、患者さんの生活再構築に向けてリハビリプランに関わり続けるシステムです。
 退院後は自宅に閉じこもることなく、自分でリハビリを継続し、可能な範囲で社会参加をしてもらう。そして、家族と共に地域とつながる─。それが生きがいにつながると考えています。