肥後医育塾公開セミナー

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令和4年度 第3回公開セミナー「高齢者の「脳血管疾患」治療」

【講師】
熊本大学病院
脳神経外科 助教
賀耒 泰之

『【講演A】脳血管疾患に対する手術治療と脳血管内治療〜脳卒中を防げ!〜』
脳血管内の手術は年々進歩 カテーテル、内視鏡など使用


  講演1で脳梗塞の大きな要因の一つが動脈硬化であることが紹介されました。動脈硬化によりプラークと呼ばれるこぶ状の塊が血管の中に付着して徐々に血管が細くなり(狭窄)、血液の流れをふさぎます。脳に血液を送る頚動脈で狭窄が進むと、脳梗塞の原因となります。
 脳梗塞の予防のために「頚動脈内膜剥離術」という手術があります。首の皮膚を切開し頚動脈を遮断し、血管の内側に付着したプラークを取り除く治療です。また、「頚動脈ステント留置術」というカテーテルを用いた治療もあります。狭窄した部位にステントという金属の筒を留置し血管を広げる治療です。
 脳血管が破れる脳内出血の際は血圧をコントロールすることが重要ですが、出血が大量の場合には外科治療が選択されます。「開頭血腫除去術」という、頭蓋骨を取り除いて出血(血腫)を取り除く方法のほか、最近では「神経内視鏡手術」も行われています。頭蓋骨に500円玉くらいの大きさの穴を開けて、カメラ付きのファイバースコープを入れ、モニターを見ながら血腫を取り除きます。脳内出血の問題点は出血で傷ついた脳の神経細胞は完全には元に戻らないということです。リハビリで改善する場合もありますが、それは傷つかずに残った神経による働きになります。脳の機能損傷が激しいと、手術による回復は困難となります。
 死亡率が高く、重篤な後遺症を残すことが多いくも膜下出血は、脳動脈瘤の破裂が原因で生じます。突然の激しい頭痛、意識障害などで発症します。
 脳動脈瘤の再破裂を防ぐための治療は「開頭クリッピング術」と「コイル塞栓術」があります。開頭クリッピング術は、開頭を行い、脳の間から直接動脈瘤を観察し、根元部分をクリップで遮断します。一方、コイル塞栓術は、足の付け根の動脈から血管内にカテーテルを通して脳血管に到達させ、脳動脈瘤の中にコイルを入れます。これにより動脈瘤の中に血液が流入しなくなり破裂を防ぎます。脳血管内治療であるコイル塞栓術は体への負担が少ない治療で、近年は選択されるケースが増えています。治療後は、脳動脈瘤の再発の可能性はゼロではないため、経過観察も必要です。
 脳ドックなどの頭部MRI検査で、破裂していない動脈瘤が見つかることがあります。脳動脈瘤の多くは破裂する可能性が低いため治療がすぐに必要とは限りません。動脈瘤の大きさやできた場所などから、破裂予防の治療を受けた方がよいか、経過観察でよいか判断します。
 脳血管内治療は新しい器材や方法が導入され、年々進歩しています。しかし、個々の患者さんによって最適な治療法は異なりますので、医師と相談しながら決めるのがよいです。