肥後医育塾公開セミナー

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令和4年度 第3回公開セミナー「高齢者の「脳血管疾患」治療」

【座長・講師】
熊本大学大学院生命科学研究部
脳神経内科学講座 特任教授
中島 誠

『【講演@】これってもしかして脳卒中? 〜脳卒中の症状と緊急対応〜』
片側のまひや激しい頭痛… 症状現れたらすぐに受診を


  脳卒中は、脳の血管に突然起こる病気の総称です。脳血管が詰まる脳梗塞、脳血管が破れる脳出血とくも膜下出血が代表的な疾患です。
 「卒中」は、今まで元気だった人が「卒然(突然)として中る」という古い言葉に由来します。脳卒中は1980年ごろまで日本人の死因の1位で、現在も上位で推移しています。脳血管疾患は認知症と共に、寝たきりや車いすでの生活になりやすい最大の原因です。
 脳出血と脳梗塞の症状は、実はよく似ています。左脳で脳卒中が起こると、右手・右足・顔の右側など、右半身にまひや感覚の異常が現れ、右脳で起こると、左半身だけに症状が現れます。目が覚めたら左手と左足が重くなっていた、急にろれつが回らなくなった―などの場合は脳卒中が疑われます。
 これに対して両手や両足に症状が現れた場合には、頚部や腰の神経に原因があることが多く、脳卒中とは考えにくいのです。
 症状は急に現れ、徐々に悪くなることもあれば、すぐに症状が良くなることもあります。
 くも膜下出血は、脳梗塞や脳出血と違って、頭に経験したことのない激痛が走ります。雷に打たれたような痛み、バットで殴られたような痛みともいわれます。意識がもうろうとし、嘔吐することもあります。激しい頭痛を訴えた後で反応が乏しくなった、というような発症の仕方をします。一方で、頭の一部を指で押さえると痛むというだけであれば、くも膜下出血の可能性は低いといえます。
 脳梗塞の治療は、大きく2つあります。点滴で血栓を溶かす治療は、4・5時間以内に開始しなければならないという時間の制約があります。点滴だけで良くならない場合は、カテーテルという管を使って、詰まった血栓を回収する方法を行います。
 これらの治療は時間との勝負で、早ければ早いほど良いといえます。脳卒中の症状が現れたら、すぐに脳卒中専門病院を受診してください。
 最後に予防について話します。脳梗塞は、血管が動脈硬化で狭くなるタイプと、心房細動という不整脈によって心臓に血栓ができるタイプがあります。予防には、禁煙と、高血圧、糖尿病、脂質異常の治療が重要です。脳出血の予防のためには、特に高血圧と過度の飲酒に気を付けてください。
 くも膜下出血の主な原因は、血管が膨らんでできた脳動脈瘤の破裂です。もし脳動脈瘤が見つかったら、破裂の危険因子である高血圧、喫煙、過度の飲酒に気を付けていただきたいと思います。