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『【講演C】高齢者心不全の地域連携とくまもとメディカルネットワーク 〜心不全がどんな病気か、ご存じですか?〜』
病院、薬局、介護施設など連携 地域全体で患者をサポート
心不全は、心臓病が悪くなったために全身に悪影響が及んで、浮腫や息切れが起こり、悪化が進んで命を縮める病気です。
心臓病の代表的なものとして、心筋が疲れやすくなる心筋症、心臓に栄養を送る血管が詰まる狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患、心筋を一定のリズムで動かせない心房細動などの不整脈、弁膜が壊れて機能できない弁膜症などがあります。
心臓は全身の臓器を動かすためのエンジン≠ネので、そこが弱ってしまうと全身の臓器も弱っていきます。心不全は無症状のステージAから入院を繰り返すステージDへと段階的に重症化します。ステージごとに病状の重さが異なるため、自身の重症度はどのステージで、どんな治療が必要なのかを知っておく必要があります。心不全は症状が出る前から始まっているため、健診を受けるなどして早期発見、早期治療に取り組むことが極めて重要です。
心不全は高齢者に多い病気ですが、高齢者は身体機能や認知機能が低下しやすく、治療に必要な適度な運動や塩分制限、薬の管理、血圧や体重測定などの自己管理が難しくなってきます。そこで、地域での診療で重要になるのが多職種連携です。地域では病院だけで治療を完結させるのは難しいため、地域包括支援センターや訪問看護ステーションなど複数の業種で連携することが必要になります。
高齢者は入院後、身体機能や認知機能が急激に悪化することがあります。入院後の自宅環境・介護サービスの調整や、入所する施設を探す必要がある場合もあり、治療が終わってから退院するまでに数カ月かかることも少なくありません。
そこで、県内の病院や診療所、歯科診療所、薬局、訪問看護ステーション、介護関係事業所、在宅関連施設などの関係機関が連携し、地域全体で患者をサポートする「くまもとメディカルネットワーク(KMN)」ができました。患者や利用者の診療・調剤・介護に必要な情報を共有し、患者さんを地域の複数の施設で手厚く支援します。
KMNに加入すれば、連携している医療機関に必要なデータを全て送信し、情報提供や治療方針の相談を迅速に、正確にできるようになります。そのため医療機関にも患者さんにもメリットが大きいシステムです。個人情報などは暗号化され、専門の部署で厳重に管理されるため、悪用される心配もいりません。