肥後医育塾公開セミナー

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令和4年度 第2回公開セミナー「高齢者の『心疾患』治療」

【講師】
天草地域医療センター 副院長・循環器科 部長
永吉 靖央

『【講演A】心疾患内科的治療の最前線(狭心症・弁膜症・不整脈) 〜高齢者心不全を予防するために〜』
内服薬で治療の選択肢拡大 生活習慣の見直しも重要に


  日本では高齢化に伴う心不全患者が急激に増えています。
 心不全は重症度に応じてステージA〜Dの4つに病期が分類されており、最初の段階のステージAは、心不全の危険因子を抱えている状態です。次のステージBは、心臓の働きに異常が現れてきた段階。ステージCは、心不全の症状が現れてきた段階。ステージDは、心不全が進んで治療が難しくなった段階です。がんの治療においては、抗がん剤などで心臓に負担がかかることがあるため、特に気を付けなければなりません。
 心不全の内科治療は年々進歩しています。糖尿病治療薬であるSGLT2阻害薬が心不全治療にも有効であることが示され治療の選択肢が増えました。最適な心不全治療を受けるためにはその原因を突き止めることが必要です。カテーテル治療は幅広く行われており、診断でも手首の血管からカテーテルを通して、心臓の血管を造影します。最近ではCTを使った画像診断も可能になりました。
 カテーテルを使って血管内部から広げるステント治療は30年以上前に登場しましたが、ステント内で再狭窄が起こりやすく、ステント治療のアキレス腱≠ニいわれました。その後、薬剤溶出性ステントが登場し、ステント内再狭窄は大幅に減少しました。ただ、ステント治療は血管内の狭窄箇所全てが対象ではありません。病変が複雑な場合などは高齢でも外科手術が選択されます。
 治療法などの決定は多職種で構成された「ハートチーム」が行います。循環器内科、心臓血管外科、麻酔科、看護師、その他の診療科、さらにリハビリテーション科、放射線技師、臨床工学士、ソーシャルワーカー、医療事務らがチームとなって治療方針を決めます。定期的に症例検討を行い、情報を共有。治療経過を合同で検討し、診療の質の改善を図っています。
 内服治療については、食生活の見直しや体重管理、禁煙、適度な運動など、生活習慣の是正に加えた適切な薬物療法「至適薬物治療(OMT)」の重要性が報告されています。これが十分に行われると、カテーテル治療を行った場合と同等の効果が得られるといわれています。
 まずは、自分が飲んでいる薬をよく理解しておくことが重要です。薬には副反応が出ることがあり、血圧が下がり過ぎる、出血しやすいなどの場合は、自己判断で服薬を中断しないことが大切です。薬の不具合については必ず主治医に報告し見直してもらい、服用の仕方についても相談してください。