肥後医育塾公開セミナー

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令和3年度 第2回公開セミナー「「かかりつけ医」と「専門病院」の診療連携」

【講師】
熊本赤十字病院 脳神経内科
寺崎 修司

『【講演A】脳卒中診療の連携はかかりつけ医から始まり、かかりつけ医で完結する』
急性期・回復期・維持期の各専門機関連携の充実図る


   脳出血や脳梗塞、くも膜下出血などの脳血管障害を脳卒中といいます。脳卒中はがん、心疾患に次いで死亡者が多い疾患で、発症すると寝たきりになり、認知症にもつながります。高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙などによる動脈硬化、心疾患による不整脈がその主な原因です。脳卒中の危険因子は、長年の不適切な食生活や運動不足、ストレス、アルコールの多飲などで、生活習慣の乱れによって起こるメタボリックシンドロームに気を付けなければなりません。
 「脳卒中は予防に勝る治療なし」といわれ、かかりつけ医の下で予防が可能です。最近は脳ドックやMRI画像診断、頸部超音波エコーなどでも動脈硬化が見つけられるようになりました。血液をサラサラにする抗凝固薬の服用により、血圧を適切に管理することで発症を約4割抑えることができます。
 顔がゆがむ、左右どちらかの腕が麻痺、ろれつが回らないなどが脳卒中の兆候です。くも膜下出血の際は突然、激しい頭痛が襲います。躊躇せずに119番で救急車を呼んでください。
 脳卒中診療は時期によってその内容が異なります。脳卒中という疾病≠ノ対応する急性期の後、適切なリハビリを行い障害≠ノ対応する回復期、機能を維持し生活≠フための準備をする維持期を経て、実際の日常生活に戻ります(生活期)。急性期・回復期・維持期を各専門機関が機能を分担しており、治療の継続性、リハビリテーションの継続性を図るために医療機関が連携しています。1995年に熊本脳卒中地域連携ネットワークが発足し、各専門機関の間で情報を取り持つツール「地域連携パス」が利用されてきました。
 生活期においては、かかりつけ医と専門医は、患者を中心とする循環型の医療を提供しています。患者はかかりつけ医にも専門医にも診てもらえると安心感があります。専門医はより充実した専門医療の提供に専念できます。かかりつけ医は必要時に専門医と協議し、治療方針を共有します。脳卒中の患者は、約半数が再発するとの報告もある一方で、5人に1人は自己判断で通院を中止、4人に1人が薬剤の服用を中断もしくは中止、3人に1人は生涯服用の必要性を理解していないという報告もあります。
 2019年12月、「脳卒中・循環器病対策基本法」が施行されました。脳卒中の診療体制整備や予防、市民啓発、後遺症対策、研究の促進、国と地方自治体には対策基本計画の策定、対策推進協議会の開設などが行政の責務として制度化されました。