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『【講演@】在宅医療における地域連携』
人生の最終段階を見据え在宅療養への意思を明確に
厚生労働省は身近な地域で医療、介護、住まい、予防、生活支援サービスが包括的に確保されることを目指した「地域包括ケアシステム」の構築整備を進め、各地域に包括支援センターを設置しています。在宅医療もその中に位置づけられ、日常の療養を支援します。患者さんの容態が急変して入院が必要な場合は入院先を紹介。退院後の自宅療養、再度の容態急変への対応、患者さんやご家族の意思により自宅でみとりをしていくこともあります。ただ24時間・365日の対応になるため、そうした在宅療養が可能な地域は限られている状況です。
在宅ケアは多職種の連携によって成り立っています。病院や歯科医、薬剤師、訪問看護師、リハビリテーション技師、栄養管理士など医療支援スタッフとケアマネジャー、ホームヘルパー、訪問入浴スタッフ、福祉用具貸与事務所職員、行政職員などの介護支援スタッフです。
熊本県では高齢者のおよそ半数が「自宅で最期を迎えたい」と考えているようです。在宅療養は「ときどき入院、ほぼ在宅…」といわれていますが、住み慣れた場所で最期まで暮らすためには健康上で困ったことがあれば、かかりつけ医(在宅医)に相談する必要があります。
ただ健康に関することを何でも相談できる、かかりつけ医を持っている人は少なく、持っていても往診に来てくれる医師はかなり少ない状況にあります。そのため通院できなくなった患者さんは、かかりつけ医に訪問診療をする在宅医を紹介してもらう必要があります。
在宅医療の主な目的は、高度な医療を提供して病気を治すことではなく、患者の療養生活を支えることです。病院で専門的治療を終えて退院するとき、在宅医は退院の支援を行います。それは退院後にさまざまな困難があるからです。例えば、慢性の心不全や呼吸器不全などがあって退院後も複雑な医療管理が必要、入院前より食事や排せつなどの日常生活動作(ADL)が低下し退院後の生活様式の再編が必要、家族との同居であっても地域の介護提供体制が不十分などです。
11月30日が「人生会議の日」であることをご存じでしょうか。人生会議とは、人生の最終段階における治療(ACP)について、急病の際にどこに運ばれていくのか、後遺症が残ったときにどうしてもらいたいのかなど、信頼する代理意思決定者と話し合い、あなたの意思を伝えておくことです。他人事ではなく、自分事としてしっかり考えておきましょう。