肥後医育塾公開セミナー

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平成10年度 第2回公開セミナー「気管支ぜんそく」

【体験発表】

魚住秀昭

『体験談「小児ぜんそくをどう克服したか」』


   私は現在、熊本中央病院の放射線科の医師として働いていますが、本日は医師としてではなく、二十年前に小児ぜんそくで苦しんだ体験者としてお話をしたいと思います。
 ぜんそくは複雑なファクターが絡み合っており、その中には家族関係なども含まれます。私の家族は両親と私、妹の四人でした。幼いころから甘やかされていたようで、今で言えば過保護だったのでしょう。小学生のころはひ弱で、胸は洗濯板のようでした。
 季節の変わり目には必ず風邪をひき、小学四年生のときには小児結核と診断されました。体育の授業を一年間休んだのですが、表面は元気そうですから級友はズル休みではないかという目で見ます。子供心にもその視線は気になりました。
 そんな私がぜんそくを克服したきっかけは、現在は上天草総合病院の名誉院長である岡崎※治先生が、毎年開催しておられたサマーキャンプへの参加でした。
 このキャンプは「ぜんそく学級」とも呼ばれ、毎年七月下旬から八月上旬までの二週間の日程で行われています。
 私は、時々、酸素が少なくて息苦しくなるような気分におそわれ、ゼイゼイと喘ぐことがありました。心配した母の勧めで参加を決めたわけです。キャンプには小学校一年生から六年生までの約三十人が参加し、一グループ四?五人で行動します。まず、早朝に起きて皮膚を鍛えるぜんそく体操(乾布摩擦)をします。さらに腹式呼吸をしたり、肺活量の測定などをしたあとに昼食を食べます。
 海の近くですから水泳も毎日二回ずつやりました。子供なので泳ぐのが楽しく、唇の色が変わるまで海につかっていた記憶があります。
 その時、同じぜんそくで苦しむ友だちの姿を見て、自分だけが苦しいのではないと思ったことが参考になりました。また、発作が始まってから治まるまでの様子を観察することで自分の症状との違いを学び、発作を避ける工夫を身に付けました。
 さらに、家族から離れて伸び伸びと過ごしたことも良かったのではないでしょうか。それまでは家族に守られて、行動が萎縮していたような気がします。
 キャンプ終了後は症状が軽くなり、中学生になっても空気飢餓感やあせりがなく、呼吸困難も薄れました。以来、高校、大学と病気らしい病気もせず、今も元気に過ごしています。
 ただ、鼻は敏感で、花粉の時期には鼻水が出ますし、子供が布団の上で跳ねたりするとクシャミを連発します。そのようなアレルギー体質ではありますが、仕事や生活上での支障はありません。
 自分の体験から言ってもぜんそくはつらい病気です。家族や周囲の理解で発作の起きる回数を三回から二回へ、二回から一回へと減らしていくことが大事です。発作の減少が自信につながれば、ぜんそくも克服できるのではないでしょうか。 ※はしめすへんに豊