ニュース

肥後医育塾公開セミナー

令和3年度 第1回公開セミナー「新型コロナウイルス感染症における「診療連携」」

【講師】
荒尾市民病院 救急科医長
田畑 輝海

『【講演D】新型コロナウイルス感染症に対する有明地域の取り組み』
医師により入院を調整


  荒尾市民病院では重症者病床は10床(現在の人員では4、5床)、全31床まで専属医師が私1人、兼任医師1、2人でコロナ患者を診ています。昨年8月の感染第2波のときに有明圏域(荒尾市、玉名市、玉東町、和水町、南関町、長洲町)では、人口比で熊本市の1・5倍の感染者が出ていました。最終的に200人規模になったクラスター(感染者集団)が出たときは、行政が感染者の入院先を手配できずにいる間、自宅で待機する感染者の容体が急変して救急搬送されて来ました。
 医療現場の実感から、コロナで重症化する人は陽性者の3割以下である一方、重症者が1人出ると中等症者10人と同等の人員が必要になります。そこで入院が必要な人だけに入院してもらい(トリアージ)、ほかは原則、医者の目が届く中での療養の仕組みが必要と考え、私たちは自宅療養のノウハウを蓄積しました。
 陽性者が出て保健所が本人に聞き取りを行うまでは迫田さんの講演の通りですが、有明圏域では医師が入院調整を行うようにしました。保健所が聞き取りをした内容は全て私に伝えてもらい、あらためて本人に電話をしたのです。現場の医師が直接電話すると、新たに聞き取れることも多いのです。糖尿病などは本人に自覚のない人が多くて、電話だけでは見逃すことがあります。入院を決める判断は医療の逼迫に直結するので陽性者外来を設け、来院してもらってCT、採血等の検査をして入院の必要性を判断しました。
 自宅療養をしている人には血中酸素濃度を測定できる機器を貸し出して毎日、電話で問診しています。その際に心配される変化を感じた人は再度、陽性者外来に来てもらって診察するようにしています。
 これまで通算1000人以上の陽性者から聞き取りを行い、外来を行い、家族構成等も考え入院先を調整し、結果当院では230人程度の入院患者となっています。これらの調整で、今のところ自宅療養者から死亡者は1人も出していませんし、入院が必要な患者の入院が遅れたこともありません。
 もう一つ大事なことはクラスター予防です。特に高齢者介護施設などで感染の報告があったときは1人目が出た時点で、私と感染管理認定看護師、保健所の人で現場に駆け付けています。それからは大きなクラスターは発生していない状況です。
 当院は全入院者にPCR検査をしていますが、それでも院内感染を起こしてしまいました。一般病棟の患者さんがマスクなしで他の患者さんと話したことから感染が広がったようです。PCR検査陰性判定は100%ではないということを患者さんにも理解してもらうことが必要なことを痛感しました。