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『【講演C】熊本市民病院の取り組み 〜入院加療生活の問題点と対策〜』
連携で人員不足に対応
熊本市民病院はエボラウイルス感染症やペストなどまで対応する県内唯一の第1種感染症指定医療機関です。感染症専門医が常勤し、個室の感染症専用病床を持ち、集中治療、人工透析などが可能です。
当院は800人余りの新型コロナウイルス感染患者の入院を受け入れました。専用病床は個室8床と一般病棟を転用した計36床体制で、中等症と一部の重症者に対応しています。入院時に本人の同意を得て病室に監視カメラを導入し合理化し、人工呼吸器などに習熟した臨床工学技士がオンコール体制で治療・看護をサポートします。
医療逼迫と報道される通り、医療現場では人員が不足しており、感染症専門医は全国に1622人しかいません。当院では私1人です。そのため1〜3人で変動する呼吸器内科医とチームを組んでいます。繁忙時は熊本大学病院から呼吸器内科医師の応援を得ています。看護師も熊本大学病院からと院内の他病棟から応援をいただいてきました。
熊本県全体としては一般内科医、呼吸器科医、感染症医、救急医、集中治療医、感染症医のほか、外科医など広範な専門領域を超えての奮起・対応で4つの波を乗り切りました。
重症者の治療には多くの人員を要する上、防護服での看護は体力を消耗します。また治療の際にはステロイド剤を使用する例が多いのですが、その副作用で患者さんの血糖値が上がり、そのため看護師が1日4回、患者さんの血糖値を測定し、その値に合わせインシュリン注射を打たねばならず多大な労力を要します。また妊婦さんには切迫流産や早産、帝王切開への対応が必要なため、小児科医、産婦人科医、麻酔科医、助産師など院内の職種連携をフル回転させて対応しています。
一方、患者さんや家族の方から寄せられる入院後の困りごとに、病室でスマートフォン(スマホ)が使いにくい状況がありました。そこで1人10分までスマホを使える面談室を用意しました。また直接の面会はできないので週に1回だけ家族に来院してもらうかたちの「タブレット面会」を導入しました。
ただ感染者の濃厚接触者である家族には14日間の自宅待機が求められ、本人が重症化すればこのような機会もなくなります。普段から感染しないように留意し、死亡率の高い高齢のご家族に感染させないよう最大限努力してください。また重症化の要因となる肥満や喫煙、高血圧、糖尿病などを予防する生活習慣に切り替え、適切な治療を心掛けて、自ら重症化しないようにしましょう。