肥後医育塾公開セミナー

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令和3年度 第1回公開セミナー「新型コロナウイルス感染症における「診療連携」」

【座長・講師】
熊本大学大学院生命科学研究部
呼吸器内科学講座 教授
坂上 拓郎

『【講演A】正しく知って正しく予防 〜新型コロナウイルス感染症〜』
ワクチンで自他を守る


  新型コロナウイルスに関し、これまでに分かったことを紹介します。感染の経過は、80%程度の人は発症から1週間程度は軽い風邪のような症状が出て、やがて治まります。残りの20%程度は7日目ごろから血中酸素濃度が下がり、肺炎の症状が出て入院が必要になります。そして5%程度が発症10日目から14日目の時期に人工呼吸器などが必要となり、亡くなる人が2%前後いるという状況です。
 新型コロナウイルス感染症の特徴は、発症の前に体内のウイルス量が急に増える点にあります。つまり感染していることを自覚できない感染者が身近に接する人たちの中に混じっている可能性があるのです。感染経路を見ると、最も多いのが飛沫感染と直接感染です。飛沫は会話で1b、せきで2b、くしゃみをすると5bほど飛びます。そのため、せきエチケットやマスク着用、手洗いとともに、3密(密集、密閉、密接)を避け、感染を予防するのです。会食の場は特に注意が必要ですが、屋外や少人数など3密でなければいいかというと、そうではありません。無症状の感染者が混じる可能性があり、その場合には感染を防ぐことができません。
 感染予防の切り札と期待されるワクチンの接種が始まっています。ワクチンは感染や重症化のリスクを下げるので“自分を守る"効果が期待できます。またワクチンを接種した後で感染した人が他人に感染させる力は極めて弱くなるので、接種率が20%上がるとその地域の非接種者の感染を2倍減少させるという報告もあります。ワクチン接種は“他人を守る"ことにもつながっています。
 最後にコロナに対処するための県の医療体制について話します。現在では平時に46の協力医療機関で最大598床を確保し、第4波からは爆発的増加時対応の計画も加わりました。熊本市内にある救命救急センターと大学病院で人工呼吸器やECMO(人工心肺装置)の必要症例への対応を行い、ホテルを宿泊療養施設として確保。回復後にリハビリが必要な人のための後方支援病院、保健所による自宅療養患者の状態把握のため地元医師との連携体制を整えました。その他、医療圏域外への入院などの広域調整や重症者病床への移送調整など行政、医療機関、医師会、県民がチームを組んで対処してきました。