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肥後医育塾公開セミナー

令和3年度 第1回公開セミナー「新型コロナウイルス感染症における「診療連携」」

【座長・講師】
熊本大学大学院生命科学研究部
血液・膠原病・感染症内科学講座 教授
松岡 雅雄

『【講演@】新たなウイルスの脅威と人間』
ウイルスの脅威が拡大


  ウイルスは人間だけでなく全ての生き物に感染します。自分で増えることができず、宿主の細胞が必要で、大きく2つに分類されます。一つは急性感染型で、次々に宿主を移って感染を繰り返し、爆発的に広がることがあります。インフルエンザ、ノロ、麻疹(はしか)、ロタなどのウイルス。もう一つは持続性感染型で、感染後もずっと宿主にとどまります。水疱瘡(帯状疱疹)、単純ヘルペス、肝炎、パピローマ、ヒトT細胞白血病、エイズなどのウイルスです。
 ウイルスはまれに動物と人間、あるいは動物と動物の間で感染します。1980年以降はエイズ、エボラ、SARS(重症急性呼吸器症候群)、MARS(中東呼吸器症候群)などの新興ウイルス感染症のアウトブレイク(突発的発生)がありました。感染を媒介したのはチンパンジー、コウモリ、ラクダなどでした。
 感染の背景には、人間と動物が接することになる畜産、都市化による開発で動物との接触頻度が高まったこと、動物のハンティング(狩猟)のほか、汚染された器具などを使用した医療行為、飛行機による人の長距離移動などの外的環境が影響しています。それに加えて、加齢や臓器移植、免疫力の低下など、体内の内的環境の変化によって体内のウイルスが暴れ出すことがあります。
 また地球温暖化も、ウイルスに大きな影響を与えています。デング熱などを媒介するヒトスジシマカの日本での分布地域が広がっていて、感染のリスクが高まっています。
 昨年から世界的流行となった新型コロナウイルスは実は突然できたものではありません。普通の風邪を引き起こすウイルスの4種類はコロナウイルスでした。2002年に中国で発生しベトナム、台湾、カナダ、シンガポールに広がったSARS、12年にサウジアラビアで最初の患者が報告され韓国にも広がったMARSもコロナでした。
 日本はこれまで、こうした新興ウイルス感染症のアウトブレイクをほぼ免れてきましたが、ついに20年、新型コロナウイルスが国内に入ってきました。現在は感染急拡大の第5波の兆しが見えています。しかしその一方で、極めて有効性の高いワクチンが開発され、現在はその接種が進んでいて、新しいワクチンや抗ウイルス薬の開発も進められている状況です。現在のワクチンが十分に行き渡れば、以前に近い日常生活に戻れる日は近いと、私は信じております。