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『【講演B】がんゲノム医療を受けるには?〜がんになった時に知っておくべき基礎知識〜』
標準治療で治らないなど条件 担当主治医としっかり相談を
がんゲノム医療では1回の検査で遺伝子の変異を調べ、そのタイプに応じて推奨される治療薬が提案されます。この医療を受けられるのは、がんゲノム医療指定病院に限られます。
最も高度ながんゲノム医療を提供する「がんゲノム中核拠点病院」は全国に12施設あり、九州では九州大学病院のみ。それに準じる「がんゲノム拠点病院」が33施設あります。その下に「がんゲノム連携病院」が161施設あり、県内では熊本大学病院が唯一指定されています。県内でがんゲノム医療を受ける際は、@主治医が熊本大学病院を紹介A大学病院で患者に説明B遺伝子検査を検査会社に依頼C大学病院に検査結果を報告D県外のがんゲノム中核拠点病院、またはがんゲノム拠点病院に、専門家会議による検査解析を依頼E解析結果が大学病院に通知され、患者に説明―の6つの段階を経ます。県外でがんゲノム治療を受けても構わないという人は、県外のがんゲノム中核拠点病院、またはがんゲノム拠点病院を主治医に紹介してもらえば4段階となります。
ただし、がんゲノム医療は全てのがん患者さんが必ず受けられるわけではありません。受けられるのは、がんの標準治療を全て受け終わった後の場合に限られます。現状、遺伝子解析を経ても推奨薬がないケースは多く、提示された薬も、その多くはまだ国の承認を得る前の治験段階のものです。
また治験では、まず動物を使った臨床試験があり、その後、人に対する安全性や有効性を確認する3段階の臨床試験を経て国に承認申請が行われますが、解析により推奨される治療薬は治験早期のものが多いです。それは即ち、有効性・安全性が不明な新薬であるということも知っておいてください。
がんゲノム治療を受けたいと思われたら、今の自分にがんゲノム医療が必要なのかを主治医としっかり相談して、自身の病状を正しく把握し、治療目標を十分理解するようにしてください。
遺伝子解析により、中には、自分ががんの家系だと分かる場合もあります。「遺伝性腫瘍」といい、がん全体の5〜10%がこれに該当します。遺伝性腫瘍であることが判明すると、本人も家族も、結婚、出産、就職、その他の問題で大きな悩みが生じてしまいます。こうした悩みに対しては「遺伝カウンセリング」を行う相談窓口があります。熊本大学病院には既に設置されており、熊本赤十字病院でも開設に向け準備を進めているところです。