【講師】 |
『【講演C】子どもからの「がん教育」』
正しい理解と共感$[める 「生きる力」育てる一助にも
がん対策基本法に基づき、2017年から第3期がん対策推進基本計画が推進されています。新学習指導要領にも「がん教育」の推進が明記されており、小学校では本年度からスタート。中学校は21年度、高校は22年度から全面的に実施されます。
がん教育は「健康教育の一環として、がんについての正しい理解と、がん患者や家族などのがんと向き合う人々に対する共感的な理解を深めることを通して、自他の健康と命の大切さについて学び、共に生きる社会づくりに寄与する資質や能力の育成を図る教育」と定義されています。
私は岡山の中・高等学校に出向き、がん教育の授業を行っており、その際気を付けていることがあります。それは、生徒の中には、がんや重病、難病にかかった経験のある子や家族を病気で亡くした子がいるかもしれないということです。がん教育によって、つらい治療の記憶が思い出されて苦しみ、家族を亡くした悲しみに落ち込むこともあるため、がん教育には十分な配慮が必要です。
がん教育の基本的内容は次の枠組みで準備が進んでいます。▽がんとは(がんの要因など)▽がんの種類とその経過▽日本のがんの状況▽がんの予防▽がんの早期発見と検診▽がんの治療法▽がんに関する痛みを取る緩和ケア▽がん患者の生活の質(QOL)▽がん患者への理解と共生─など。文部科学省のホームページには、がん教育の資料や素材が用意されています。
私は授業で、がんに関する基礎知識や予防、治療、がんに関する情報収集の仕方などを話します。冒頭から「がんの種類を思いつくだけ言ってみてください」など、何度も生徒に問い掛けながら授業を進めるようにしています。国立がんセンターの「がんを防ぐための新12カ条」を活用して予防への理解を促し、私は抗がん剤治療が専門なので、治療の内容では、自己免疫ががんをやっつけてくれる「免疫チェックポイント阻害薬」が最近になって登場したことなども紹介します。
がんになると自己理解や自己管理能力が試されるものです。がんと診断された家族への接し方も考えねばなりません。これは子どもにとって、究極の人間関係能力や社会性を養い、「生きる力」を育む教育になると考えています。