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『【講演A】これからのがん検診:健康と未来を守る』
「対策型」と「任意型」に大別 上手に組み合わせて活用を
日本人の死因の約3割をがんが占め、死亡者数は約37万人(2018年)に上ります。片や米国では1990年代以降、がん死亡者は減少しています。その差の理由の一つはがん検診受診率の違いです。検診の国際比較で日本は、先進各国の中で低い水準で、1位の米国の半分程度です。
初期がんの5年生存率は部位によって83%以上ですが、がんが進行すると生存率が大きく下がります。つまり、がんは早く見つけて治療をすることが大切なのです。
国が推奨するがん検診は5種類。検診の利益が不利益を上回り、死亡率を下げると分かっている「5大がん」(胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮がん)が対象です。検診でどのくらいがんが見つかるかというと、例えば、大腸がんは1万人中607人(約6%)が要精密検査を勧められ、その後実際に精密検査を受けた417人(約4%)の中の17人(要精密検査の2・8%)ががんと診断されています。他のがんも同程度の確率で発見されます。
がん検診には「対策型検診」と「任意型検診」の2種類あります。対策型は公的な予防対策として行われ、費用は少額の自己負担で済みます。任意型は医療機関などが任意に提供する医療サービスで、基本的に費用は全額自己負担です。喫煙や飲酒、食事などからがんになりやすい生活をしていると思われる人は、対策型だけでなく任意型を上手に活用するとよいでしょう。
今後実用化される可能性のある血液や唾液、便や尿に含まれる物質からがんを検出する検査法を紹介します。
まずは「血液1滴診断」。これは血液中の「マイクロRNA」という物質から、乳がん、膵臓がん、卵巣がんなど13種類のがんを99%の精度で検出できます。「便のDNA検査」は大腸がんの早期発見に有効です。「唾液のDNA検査」は口腔がんを80%、乳がんを95%、膵臓がんを99%という高精度で見分けられるとされます。その他、線虫という、土の中に存在する1_程度の嗅覚が発達した生物を使った尿検査もあり、既にいくつかのクリニックでこの検査法が導入されています。
がんを検診で早期に発見して治療につなげ、長生きしていただきたいと思います。