肥後医育塾公開セミナー

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令和2年度 第1回公開セミナー「がんの予防と早期診断」

【講師】
熊本大学大学院生命科学研究部消化器外科学講座 准教授
山下 洋市

『【講演@】最新の疫学統計から読み解くがんの病因とその予防』
喫煙、食事、飲酒などに注意 バランスと適量 心掛けて


  日本人のがん発症のリスク要因に関する報告によると、肺がんの原因は喫煙や受動喫煙など外因子の寄与が90%、大腸がんは飲酒など外因子の寄与が83%、胃がんはピロリ菌感染と喫煙など外因子の寄与が78%、膵臓(すいぞう)がんは喫煙など外因子の寄与が50%、肝臓がんはウイルス性肝炎と、喫煙や飲酒など外因子の寄与が89%を占めており、喫煙、食事、飲酒、感染に注意が必要だと分かります。
 たばこを吸うと、男女共に約10年寿命が短くなるといわれます。がんだけでなく脳卒中や心筋梗塞、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などのリスクも高まります。しかしニコチンは、コカインやヘロインなどの薬物と同程度の高い依存性があるため禁煙は難しいのです。そこで最近は、禁煙用ガムや貼り薬などの禁煙補助薬が販売されています。保険が適用される禁煙外来も増えており、禁煙にかかる費用は、たばこ代(1日1箱)の半分〜3分の2程度です。
 食事では、健康に良いとされる食品の5分類があります。健康に最も悪影響を及ぼすのが、赤い肉(牛肉や豚肉)、加工肉(ハムやソーセージ)、白い炭水化物(ジャガイモを含む)、バターなどの飽和脂肪酸などです。逆に健康に良いのは魚、野菜と果物、黄色い炭水化物(玄米や全粒粉)、オリーブオイル、ナッツ類があります。
 「酒は百薬の長」といわれますが、飲酒には適量があります。それは、1週間で7単位〈お酒の1単位は、ビールなら500_g、日本酒は1合(180_g)、ウイスキーはダブル(60_g)、アルコール25度の焼酎は0・6合(110_g)、ワインはグラス2杯弱(200_g)〉を超えない量にし、休肝日を1〜2日取るような飲み方です。
 最後に、国立がんセンターが発表した「がんを防ぐための新12カ条」を紹介します。@たばこは吸わないA他人のたばこの煙をできるだけ避けるBお酒はほどほどにCバランスの取れた食生活をD塩辛い食品は控えめにE野菜や果物は不足しないようにF適度な運動G適切な体重維持Hウイルスや細菌の感染予防と治療I定期的ながん検診をJ身体の異常に気が付いたら、すぐに受診をK正しいがん情報でがんを知ることから─。ぜひ覚えておいてください。