肥後医育塾公開セミナー

肥後医育塾公開セミナー
肥後医育塾公開セミナー

令和元年度 第3回公開セミナー「克服したい! 花粉症とぜんそくの最新治療」

【講師】
熊本地域医療センター呼吸器・アレルギー内科 医長
津村 真介

『【講演B】ぜんそくの最新治療〜重症難治例での選択肢〜』
増える治療の種類と方法 患者の経済的負担含め選択


   重症のぜんそくとは、長期管理薬や発作治療薬などによる標準的な治療を強く行っても病気のコントロールが不十分、または病気のコントロールのために強い治療を必要とする患者さんのことをいいます。国や地域、年代によりさまざまですが、ぜんそく患者のおよそ10人に1人が重症といわれています。
 ぜんそくの治療が困難になったとき、私たち医師はまず、ぜんそくの診断が正しかったのか、治療以外にできることはないかと、改めて考え直します。薬剤の吸入が適切でないことの他にも多くの要因が考えられるためです。腫瘍や結核といった他の疾患の可能性、アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎、逆流性食道炎や睡眠時無呼吸症候群などの合併症、環境中のアレルゲンや喫煙、肥満などの増悪因子などがないかを検証します。
 もし合併症などがあれば、その治療を進め、それでも良くならないときに吸入ステロイドの用量を増やし、複数の補助治療薬を使います。それでも病気をコントロールできない場合、ステロイドの全身投与(長期内服)や生物学的製剤の投与などの薬物治療、内視鏡を使った気管支サーモプラスティーという治療を選ぶことになります。
 ただステロイドの全身投与は、発作を止める効果が高い半面、副作用があるため長く使わないようにしています。副作用には、感染症にかかりやすい、血糖値が上がり糖尿病や骨粗しょう症が進む、胃潰瘍を起こす―などがあります。
 生物学的製剤は分子標的治療薬とも呼ばれます。炎症を起こす分子を標的とし、それ以外に作用しないようになっており、より安全・有効に病気を治療する目的で開発された薬です。4種類が出ていますが、いずれも高価で、長く使用を続ける必要があります。気管支サーモプラスティーは、内視鏡からカテーテルを挿入して5_程度の電極から気管支粘膜を温度65度で加熱していく治療法です。1回当たり20〜40分間で済みますが、3週間おいて3回行う必要があります。これら2つの治療法の有効率はおよそ7〜8割とされますが、人によって効果が得られないこともあり、試してみなければ分かりません。
 この10年でぜんそく治療の選択肢は増えました。私どもは治療を強化する前に患者さんの経済的な負担も含め、総合的に判断して治療を進めています。フィギュアスケートの羽生結弦選手など世界のトップアスリートの中には、ぜんそくを持ちながら頑張っている人もいます。ぜひ諦めないでほしいですね。