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『【講演A】ぜんそく診療における吸入療法の重要性』
治療の主役を担う吸入薬 正しい方法で忘れず吸って
ぜんそくは気道の炎症によって症状が出る病気で、好酸球という細胞が悪さをして炎症を起こします。患者さんの気道は症状が出ていなくても赤く腫れてむくみ、上皮が がれ、たんも増えて狭くなっています。発作を起こすと気道はさらに狭くなります。
ぜんそくは症状や検査結果から総合的に診断します。喉や胸がヒューヒューゼイゼイする喘鳴(ぜんめい)やせき、発作性の呼吸困難、運動時の息苦しさなど。これらの症状が夜間や早朝、安静時にも出現する、季節の変わり目に出やすい(変動性)、症状が繰り返し起こる(反復性)―などがポイントになります。
これに加えて、息の吐き出しにくさを調べる肺機能検査、アレルギー(IgE抗体)や好酸球性炎症(血液やたんの好酸球、呼気中の一酸化窒素濃度)の検査で気道の炎症を評価します。
ぜんそくは氷山によく例えられます。水面上には発作が現れ、水面下には隠れた炎症があるためです。炎症をしっかり抑えないと発作を防ぐことはできません。そのため治療は2本立てになります。発作がないときは発作予防薬として吸入ステロイド薬を主体とする長期管理薬を用い、発作があるときには気道を速やかに広げて発作を止める発作治療薬を使います。
ステロイド薬は、全身に効くものは効果が強力な半面、副作用も強くなります。一方で、吸入ステロイド薬はピンポイントに気道に到達するため、少ない量で症状の増悪リスクを下げる効果があり、副作用も少ないというメリットがあります。この吸入薬の普及により、国内のぜんそくによる死者数は減少しています。
吸入ステロイド薬がぜんそく治療の主役であり、必要に応じて長時間作用性気管支拡張薬((β)(ベータ)2刺激薬や抗コリン薬)を併用します。発作時は短時間作用性気管支拡張薬を使用します。1本で予防と発作治療が可能な吸入ステロイド薬と長時間作用性β2刺激薬の配合剤もあり、患者さん主導の治療が可能です。
ぜんそく治療で大切なことに「アドヒアランス(服薬順守)」があります。吸入薬は正しい方法で忘れずに吸うことが重要です。しかし、吸入指導をしても1回でできる人は5割弱程度にとどまっており、1年後に使い方を間違う人もいます。そのため医師による吸入指導後の患者さんの吸入手技チェック、さらに再度の吸入手技の確認といったサイクルが大切です。