肥後医育塾公開セミナー

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令和元年度 第3回公開セミナー「克服したい! 花粉症とぜんそくの最新治療」

【講師】
熊本大学病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科 講師
宮丸 悟

『【講演@】花粉症治療の最前線』
「舌下免疫療法」が主流に 新タイプの抗体薬も登場


   花粉症などアレルギー性鼻炎に悩まされる人は年々、増えています。くしゃみ、鼻水、鼻づまりが3大症状で、スギやヒノキなどの花粉、屋内のほこりに含まれるダニやペットの毛、カビが原因物質とされます。
 これらが体内に多く入ると抗原抗体反応が起こり、ヒスタミンなどの物質が放出されます。これが知覚神経に働き、くしゃみ、鼻水、鼻づまりが生じるようになります。鼻づまりは、好酸球などの炎症細胞によっても起こります。くしゃみ、鼻水と鼻づまりは症状を起こさせる物質が異なるため、治療法も違ってきます。
 症状が出ないようにするには、抗原の除去と回避が必要です。まずは花粉の飛散が多いときの外出を控え、外出時にマスクや眼鏡を使うことが基本です。
 薬物療法では抗ヒスタミン薬の服用が一般的です。服用すると脳内でヒスタミンの働きが抑えられ、眠気や、判断力・集中力の低下が起こることがあります。薬局で購入できる薬の中には脳内のヒスタミンの働きを強く抑えるものもあり、眠気に注意が必要です。
 2018年には貼るタイプの抗ヒスタミン薬も登場しました。これは成人のみが対象です。また昨年12月には、重症のスギ花粉症の方を対象とした抗IgE抗体薬が出ました。従来の抗ヒスタミン薬などに加えて使う皮下注射薬になります。ただ、使える方や処方できる施設、医師に制限があります。また、一人平均月額約9万円と高価な薬剤です。
 唯一の根治的治療法として、以前から行われてきた注射による皮下免疫療法に加え、2014年には舌の下に薬剤を置く舌下免疫療法が登場しました。小児にも使え、現在の免疫治療の主流になっています。ダニとスギ花粉の抗原にしか適用できませんが、7〜8割の人が効果を実感しています。1日1回、舌の下に1〜2分間、薬剤を保持して飲み込む方法で3〜5年の長期使用が推奨されています。ただ、花粉が飛散していない時期も使用し続ける必要があります。副作用として口腔内の腫れが出ることがありますが、ほとんどは軽度のものです。
 薬物療法で改善が見られない場合は、手術療法を選択できます。レーザー照射で鼻粘膜を変性させアレルギー反応を減弱化させる手術、鼻腔の通りを改善させる手術(形態整復術)、鼻漏を改善させる手術(神経切断術)─などです。
 このように近年は治療の選択肢が広がりました。