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肥後医育塾公開セミナー

令和元年度 第2回公開セミナー「あなたもかかる? 知っておきたい感染症」

【講師】
済生会熊本病院消化器内科部長
兼 腫瘍内科・糖尿病科部長代行
兼 栄養部長
今村 治男

『【講演A】吐き気と下痢ってノロ?』
ウイルス・細菌の特性知り 日頃から食中毒予防対策を


  昨年1年間の国内の食中毒発生報告件数は1330件で、患者数は1万7282人。このうち3人が死亡しました。原因は、ウイルスや細菌による感染症のほか、自然に存在する毒や化学物質によるものもありました。
 人間の体は、害になるものが体中に入り込まないよう、免疫機能によって守られています。病原物質が細胞に侵入すると、炎症を起こして細胞を壊し、周囲に増殖が広がらないような仕組みになっています。食中毒の原因物質ではノロウイルスが約半数を占め、カンピロバクターやウエルシュ菌がそれに続きます。
 ノロウイルスは直径3・8ナノb(1ナノbは1_の10万分の1)と極めて小さいため、腸管粘膜のバリアをすり抜け、細胞内に入ってきて増殖します。潜伏期間は1〜2日で、吐き気や嘔(おう)吐(と)、軽度の発熱などの症状が出ます。症状は1〜2日で消えますが、感染力が強く、10日間ほどウイルスの排出があります。そして、遺伝子変異が起きるため感染が繰り返されます。ノロウイルスは非常に小さいので、患者さんの吐物や下痢の便が乾燥するとウイルスが空中に舞い上がり、他の人に感染することがあります。アルコール消毒では死滅しないため、次亜塩素酸ナトリウムでの消毒が必要です。 
 細菌の多くは高温・多湿の条件下で、自力で増殖します。中には低温・乾燥の環境や塩分に強いものもあります。また、「芽(が)胞(ほう)」という堅い殻に閉じこもり、条件が良くなるのを待って増殖するウエルシュ菌やボツリヌス菌などの細菌もいます。
 食中毒を予防するには、菌やウイルスを「つけない」「ふやさない」「やっつける」が原則です。嘔吐や下痢の症状がある人は調理場に入らない、手洗いや適切な汚物処理と消毒や清掃を行う、食品や器具を洗浄し加熱するものとしないものを分ける、食品は低温で保存し加熱調理する―。こうした生活習慣を心掛けることが大切です。
調理の際は手洗い、   加熱を徹底して
 調理の際は小まめに手を洗い、生の肉や魚などに触った手で、生で食べる野菜などに触らないようにしましょう。加熱調理を行う際は、中心までしっかり加熱されていることを確認し、電子レンジを使う場合は均一に加熱されているか、注意してください。
 残った煮込み料理やスープなどは手早く冷ましてすぐに冷蔵庫に入れ、食べる際には再度沸騰させましょう。