【座長・講師】 |
『【講演@】倦怠感と高熱ってインフルエンザ?』
インフル症状に似た感染症 人によって重症化の恐れも
感染症にはインフルエンザの症状によく似たものがあります。以下、症例形式で紹介します。
症例1は16歳男性。12月下旬、2日前から39度近くの熱があり、物を飲み込むと喉に痛みが出るとのこと。検査したら、喉のへんとう腺が肥大して周辺に白いうみが付着していました。診断は「化(か)膿(のう)性扁桃(へんとう)炎」。悪化すると、へんとう腺周辺を切開し、うみを出す必要があります。
インフルエンザと違い、せきや鼻水がなく、喉の痛みがあるところがポイントです。
症例2は2歳男児。12月下旬、2日前から38度を超す発熱があり、せきや鼻水、目の充血があるものの、インフルエンザ検査では陰性でした。
翌日、熱は下がりましたが、翌々日、耳の後ろから発疹が出現し、全身に広がりました。検査で「麻(ま)疹(しん)」(はしか)と診断。麻疹の初期はインフルエンザと区別がつきにくく、発疹が出てようやく疑われます。
保護者に聞くと、2週間前に東南アジアに旅行したとのこと。まだワクチン接種が一通り終わらない幼児を連れた海外旅行にはリスクがあります。東南アジアを含め世界的に麻疹が流行しています。麻疹は高熱が出て体力を消耗し、抵抗力が弱い場合は肺炎、下痢、中耳炎を起こしてさらに重篤化しますし、1000人に1人の頻度で脳の後遺症を残す脳炎を起こします。
症例3は70歳男性。11月下旬、3日前から38度台の発熱とせき、下痢と倦怠(けんたい)感がありました。インフルエンザ検査は陰性、その後、たんや胸痛が出現。話を聞くと1週間前に郊外の温泉に行ったそうです。
尿検査と胸部レントゲンにより「レジオネラ肺炎」と診断。下痢などの症状が出ることもあります。この菌は水場のぬめった所のアメーバなどに生息しています。庭の散水ホースの残り水などにもいるので、庭仕事の後はしっかり手を洗うことが大切です。
症例4は82歳女性。12月上旬、38度の発熱と倦怠感、下痢の症状が出て、感冒薬を服用しても改善なし。脇腹に虫刺され痕があり、そのかさぶたと血液を検査すると、マダニが媒介する「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」でした。死亡例もあり、まだ特効薬もワクチンもありません。
マダニはイノシシなどの動物の毛の中に潜み、産卵期にメスが吸血します。マダニに刺されたら、自分で除去せず皮膚科を受診してください。その後2週間くらいは発熱があったら要注意です。野外作業時は皮膚を露出しない、作業後は屋外で上着を脱ぎ、入浴することで予防できます。
これらの感染症は人によっては重症化する恐れもあるため、未然に予防することがとても大切です。