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肥後医育塾公開セミナー

平成31年度 第1回公開セミナー「食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、じんましん、薬疹」

【講師】
熊本大学大学院生命科学研究部
皮膚病態治療再建学講座 講師
牧野 貴充

『【講演B】薬疹と思った時の対処法』
薬剤服用履歴の記録が重要 「かかりつけ医」への相談も


  薬疹(やくしん)とは、内服、注射、吸入、その他、検査や麻酔などで使用される薬剤の影響による皮膚・粘膜症状を言います。
 薬疹の頻度は統計学的にも多くはなく、最も頻度の高い薬剤で約1万回に1度、3番目に頻度の高い薬剤になると10万回に1度に低下します。薬剤の中では、抗菌薬や解熱鎮痛薬、抗けいれん薬などで頻度が高くなっています。重篤な皮膚障害を起こす重症薬疹も同様に、抗菌薬や解熱鎮痛薬、抗けいれん薬で発生しやすい傾向にあります。
 重症薬疹の皮膚粘膜眼症候群(スティーブンス・ジョンソン症候群)の診断基準では、重篤な粘膜病変(出血やただれ)と皮膚のただれ、表皮剥離は体表面積の10%未満にとどまること、発熱を伴うことが重要な症状です。さらに副所見として、ターゲット状紅斑という、アーチェリーの的のような2〜3層の色調の変化が特徴的な皮膚症状として認められます。もう一つの重要薬疹である中毒性表皮壊死(えし)症では、皮膚の水疱(すいほう)やただれ、表皮剥離は体表面積の10%を超え、発熱も伴うことが重要な症状です。同様に副所見としてターゲット状紅斑も認められます。
 重症薬疹の治療では原因薬剤の投与を中止し、皮膚組織の病理検査、また感染症や水疱症、合併症などがないかを検査した上で、ステロイドの全身投与や点滴によるステロイドパルス療法などを行います。
 薬疹はアレルギー反応の一種で、中には特殊な症状が出るものもあります。例えば、太陽の光を浴びると紫外線と薬剤が反応してアレルギー反応を起こす光過敏型薬疹や、同じ部位に繰り返し皮疹(ひしん)が生じる固定薬疹、手足から体幹に広がる扁平苔癬(へんぺいたいせん)型薬疹、抗がん剤の分子標的薬剤では、ざ瘡様(そうよう)皮膚炎、その他、手足のよくすれる場所に症状が出る手足症候群などを起こします。
 薬疹を疑われたら、まず過去に似た皮膚症状がなかったか、いつから症状が出たのか、普段服用しない薬を服用しなかったか―などの薬剤歴の確認が重要です。その上で、かかりつけ医に相談しましょう。それでも症状が続く場合は、紹介状を書いてもらい、皮膚科を受診してください。
 皆さんにぜひ知っておいてほしいのは、薬を中止しても、すぐには症状が改善しないということです。体内に取り込まれた薬が体外に排せつされるまでの時間は、薬により大きな幅があるためです。そこで薬疹を疑っても、決して焦らないことが大切です。